炭化水素資化性酵母の菌学的研究
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概要
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n-アルカン, n-アルケン, 炭化水素混合物といった鎖状炭化水素を利用する酵母についてはこれまで良く知られているが, フェノール, ナフタレンといった芳香族炭化水素を資化する酵母については未だ報告がない.われわれは, 先に石油精製工場から出る硫酸スラッジの微生物処理を試み, 得られた汚泥中より25株の炭化水素資化性菌を分離したが, その中の一株WY 2-2菌は, 酵母であるにもかかわらず, 鎖状炭化水素以外にフェノール, ナフタレンといった芳香族炭化水素にも生育することを認めたので, 本報ではその菌学的性質について検討した.その結果は, ascosporeを作らず, 無胞子酵母であるCryptococcaceaeに属し, その中では, true mycelium, arthrosporeを作ることによりsubfamily Trichosporoideaeに属する. この中には, GenusとしてTrichosporonしか含まれてないので, 本菌はこのGenus Trichosporonに属する. この中では, 糖の発酵性がなく, 糖の資化性はすべて陽性, 硫酸塩の還元能を欠き, アルコールを単一炭素源として利用せず, アルブチン分解能は弱いなどの性質よりTrichosporon cutaneumに類似の菌株と同定した.Trichosporon属では, 炭化水素資化性を有するspeciesとしてTrichosporon capitatumのみが報告されており, しかも芳香族炭化水素の利用性については知られていない. したがってWY 2-2菌は, 鎖状炭化水素のみならず, 芳香族炭化水素をも利用できる点できわめて特徴的な酵母である.
- 社団法人日本生物工学会の論文
- 1969-03-25
著者
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