快適自己ペース走による感情の変化と運動強度
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概要
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快適自己ペース走を遂行した後のポジティブな感情の変化を調べるとともに,走行時の運動強度を調べることを目的として,男子大学生を対象にトレッドミルを用いて15分間のランニングを行った。運動強度は,走行中のRPE,心指数,%Vo_2max,さらには運動前後の血中化学的成分から推定し,感情の変化は筆者らが作成したMCL-3尺度を用い,運動前後と回復期に測定した。結果を要約すると次のとおりである。1.自己ペース走行時のスピードは毎分140mで,主観的運動強度(RPE)は「ややきつい」と感じる以下のレベルであった。運動終了時の心拍数は160拍/分に達したが,後半10分間の平均心指数は155拍であり,走行時の%Vo_2maxは60%レベルであった。また,血中乳酸値,血漿カテコールアミン値の変動値は運動前に比べ約2倍の増加にすぎず,運動後の血中乳酸値は換気量が急激に高まる第1の変移点(2mmol/l)前後であった。これらの主観的,生理生化学的分析結果から,快適自己ペース走の運動強度は中等度かそれよりやや高いレベルであることが推察された。2. 運動に伴なう「快感情」「満足感」などの感情の変化は類似しており,運動後に有意な増加がみられ回復期(30分後)に減少するが,運動前より高いレベルにあった。「リラックス感」は運動直後より回復期においてさらに増加し,ピークが「快感情」や「満足感」より遅く現れ,異なった変化過程をとることが分かった。これらのとから,運動後の気分の高揚感は少なくとも運動終了後30分間は持続していることが指摘された。本研究から,快適自己ペース走は中等度の運動強度に相当し,運動に伴うポジティブな感情の増加は感情の成分によって変化過程は異なり,少なくとも運動後30分間は「気分のよい状態」が続くことが示唆された。また,運動に伴うポジティブな感情の増加が,「反動処理仮説」「気晴らし仮説」「モノアミン仮説」などを用いて説明された。
著者
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徳永 幹雄
Institute of Health Science, Kyushu University
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徳永 幹雄
第一福祉大学人間社会福祉学部
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斉藤 篤司
Institute of Health Science, Kyushu University
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橋本 公雄
Institute of Health Science, Kyushu University
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斎藤 篤司
九州大学健康科学センター
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徳永 幹雄[他]
Institute of Health Science, Kyushu University
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