<原著>スポーツ行動の予測因に関する研究(1) : 社会学的要因について
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
学生のスポーツ行動の予測に有効な変数を見出すことを主な目的として, 数量化理論第II類による判別分析を採用して研究を進めてきた。本稿では, 社会学的要因について分析してきたが, 結果を要約をすると以下のようになる。1. 男女ともスポーツ実施群(週1日以上実施)は, 非実施群より一般にスポーツとのかかわり合いは深く, スポーツ実施をめぐる条件に恵まれている者が多い。この傾向は, 女子より男子に強い。2. 男子は, スポーツとのかかわり, スポーツ条件, 重要なる他者などスポーツ関連要因は, 構造的に相互連関しながら学生のスポーツ実施を直接的, 間接的に規定している。女子も男子とだいたい同じ傾向であるが, 男子程変数の構造連関は複雑ではない。3. 変数全体の判別力を示す相関比は, 男子0.480,女子0.438と余り高くはなかったが, 偏相関で有意性のあった変数は男子の「家の収入」, 「TV・ラジオスポーツ番組」, 「睡眠時間」, 「現在友人のスポーツ奨励」, 「出生順位」, 「現在母の奨励」, 「体育の好嫌」, 「父のスポーツ経験」, 「余暇観」, 「住居形態」, 「現在のクラブ所属」, 「自由時間」, 「過去時の奨励」, 「スポーツのチャンス」, 「見るスポーツ好嫌」, 「通学時間」, 女子の「現在のクラブ所属」, 「人生観」, 「スポーツの技能・知識」, 「出生順位」, 「生活満足度」, 「住居形態」, 「現存友人のスポーツ奨励」, 「体育の好嫌」, 「学部」, 「一般新聞スポーツ欄」, 「TV・ラジオスポーツ番組」, 「父の学歴」, 「通学時間」, 「過去母の奨励」, 「兄弟数」, 「見るスポーツ好嫌」, 「過空き時間」, 「親友の数」, 「TV視聴時間」である。これらは, 学生のスポーツ行動を予測するのに有効な変数といえる。また, 各要因ごとの変数の判別力順位には, 男女間の違いがみられた。4. カテゴリーの寄与と方向について, 男子のスポーツ実施群には住居形態が「自宅」, 家の収入が「3〜400万円未満」, 現在の友人のスポーツ奨励が「非常にある」, 出生順位が「第3子以下」, 現在母の奨励が「かなりある」などのカテゴリーの寄与が大きい。女子の実施群は, 現在スポーツクラブに「所属している」, スポーツの技能・知識に「恵まれている」, 学校の体育が「過去嫌い現在好き」, 現在の友人のスポーツ奨励が「かなりある」, 学部が「理系」などのカテゴリーが大きく寄与している。なお, カテゴリースコアーに疑問の残ったものについては, 以後の課題としたい。数量化理論モデルは, 操作的機能的な統計数理的モデルであり外的基準に対する説明変数の判別力は示すが, 因果関係については何も語らない。したがって, 変数の判別力を手がかりにして因果関係, 規定関係を推定(予測)することになるが, 本研究でその有効性が明らかになった変数によって学生のスポーツ行動の予測がある程度可能となろう。本稿では, 社会学的要因のみの分析であったが, これに身体的, 心理的要因として有力な変数を加えていくことによって判別力の高い変数設定を行い, そこからスポーツ行動の予測モデルの作成に向うことが今後の課題である。
- 1981-03-30
著者
-
徳永 幹雄
Institute of Health Science, Kyushu University
-
橋本 公雄
Fukuoka Institute of Technology
-
多々納 秀雄
Institute Of Health Science Kyushu University
-
金崎 良三
Institute of Health Science, Kyushu
関連論文
- 高齢者のスポーツに関する社会心理学的研究(4) : 都市と農村におけるゲートボール実施者の比較
- 高齢者のスポーツに関する社会心理学的研究(3) : ゲートボール実施をめぐる問題について
- スポーツ行動の予測因に関する研究(3) : 男女別・年代別の比較
- 高校一流サッカー選手のキャリア形勢過程とキャリア志向
- 学生スポーツの変容に関する研究 : 九州地区大学体育大会を中心に
- 軽症高血圧者に対する健康処方の適用と効果に対する研究(第2報) : 3カ月間のテニス教室について
- 軽症高血圧者に対する健康処方の適用と効果に関する研究(第1報) : 3カ月間の運動教室について
- スポーツ参加の多変量解析(II) : 数量化理論第III類によるパターン分析
- スポーツ参加の多変量解析(I) : 数量化理論第II類による要因分析
- スポーツ選手の心理的競技能力にみられる性差, 競技レベル差, 種目差
- スポーツクラブ経験が日常生活の心理的対処能力に及ぼす影響
- スポーツ選手の心理的競技能力のトレーニングに関する研究(4) : 診断テストの作成
- 運動経験と発育・発達に関する縦断的研究
- テニス選手に対するメンタルトレーニングの実施と効用性
- 運動による気分変化の一方略 : カップリングを用いることの意義
- メンタルヘルスパターンと健康行動との関係(1) : 特に身体活動関連変数を中心として
- 児童の組織キャンプ体験がストレス反応に及ぼす影響 : 認知的評価との関連から
- スポーツ競技におけるパフォーマンスを予測するための分析的枠組みの検討
- スポーツ選手の心理的特性に関する国際比較
- スポーツ選手に対する心理的競技能力のトレーニングに関する研究(2) : 皮膚温バイオフィードバックを利用したリラクセーションのトレーニングについて
- スポーツ選手に対する心理的競技能力のトレーニングに関する研究(1) : イメージ・トレーニングの予備的調査・実験
- スポーツクラブの日常的活動を規定する要因の分析
- 運動の爽快感とその規定要因(1)
- 大学における公開スポーツ教室の運営・指導に関する事例研究
- 女子生徒のバレーボールに対する関心の変化とその要因 : 質的データー分析による仮説
- スポーツ選手の心理的競技能力のトレーニングに関する研究(3) : テニス選手のメンタル・トレーニングについて
- 北コロラド大学の体育・スポーツ
- 小規模事業所で働く婦人の健康に関する調査研究(2) : 健康状態のパターン分類とその関連要因の検討
- 小規模事業所で働く婦人の健康に関する調査研究(1) : 健康状態とその規定要因について
- 社会人のスポーツクラブ所属を規定する要因の分析
- スポーツ選手のリタイアメントに関する社会学的研究 ; 調査結果の検討
- スポーツ選手のリタイアメントに関する社会学的研究 ; 先行研究の動向
- メンタルヘルスパターン診断検査の作成に関する研究(1) : MHP尺度の信頼性と妥当性
- 試合前の状態不安と実力発揮度の関係
- 大学生の栄養素等摂取状況と食物消費構造
- 軽症高血圧者に対する健康処方の通用と効果に関する研究(第3報) : 第2回テニス教室について
- 大学体育大会参加者の運動部参加の動機
- 中高年者水泳教室での運動処方実践例
- 快適自己ペース走による感情の変化と運動強度
- 感情の3次元構造論に基づく身体運動特有の感情尺度の作成 : MCL-3尺度の信頼性と妥当性
- 喫煙行動の形成・変容過程に関する考察
- 学生のスポーツ行動の規定要因に関する研究(1) : 心理的・身体的要因について
- 九州大学教養部学生の体力及びスポーツ行動
- スポーツ行動の予測因に関する研究(2) : 身体的・心理的要因について
- 身体運動に対する態度と行動に関する研究
- アスリートの競技引退に関する研究の動向
- 試合中の心理状態の診断法とその有効性
- 快適自己ペース走によるポジティブな感情の変化量を規定する生理心理学的要因
- 競技者の心理的コンディショニングに関する研究 : 試合前の心理状態診断法の開発
- 〈研究資料〉運動中の感情状態を測定する尺度(短縮版)作成の試み : MCL-S.1尺度の信頼性と妥当性
- 〈研究資料〉諸外国及び日本における大学保健体育教育の動向
- 〈研究資料〉軽症高血圧者に対する健康処方の適用と効果に関する研究(第5報) : 中高年者のスポーツの継続条件をさぐる
- 〈研究資料〉軽症高血圧者に対する健康処方の適用と効果に関する研究(第4報) : 運動教室10年間の医学的検査結果について
- 快適自己ペース走時の運動強度を規定する生理心理学的要因
- 血圧及び健康度と生活形態に関する調査研究
- 運動の爽快感とその規定要因(2)
- スポーツ選手の心理的競技能力の「特性」および「状態」に関する研究 : 準硬式野球大会参加選手について
- 快適自己ペース走の再現性の検討
- 精神的健康パターンの分類の試みとその特性
- 血圧・脈拍の変動性および立位負荷に対する反応性
- 大学生の最高血圧およびその変動性に関係する要因
- 九州大学教養部学生の体力の実態と年次推移
- スポーツにおける競技特性不安尺度(TAIS)の信頼性と妥当性
- 健康度と生活習慣からみた健康生活パターン化の試み
- バイオフィードバック時の血圧の反応
- 一過性の運動による感情の変化と体力との関係
- スポーツ行動の規定要因に関する研究 : その方法論的課題
- 運動パフォーマンスに及ぼす自己評価と自己効力感の影響
- 中年婦人の健康処方の適用と効果に関する研究(2) : 健康テニス教室終了後2年間の追跡調査
- 運動によるストレス低減効果に関する研究(1) : SCL尺度作成の試みと運動実施者のストレス度の変化
- か月間のテニスによる身体活動が体力に及ぼす影響
- スポーツ行動の継続化とその要因に関する研究(2) : 大学生の場合
- スポーツ行動の継続化とその要因に関する研究(1) : 婦人テニス教室参加者の場合
- スポーツ選手の競技不安の解消に関する研究(2) : バイオフィードバック・トレーニングによる特性不安への影響について
- 中年婦人の健康処方の適用と効果に関する研究 : 3か月間のテニス教室について
- 健康度診断指標の検討とその関連要因
- スポーツ行動診断検査(DISC.1)の作成
- イリノイ大学の体育・スポーツ
- 若年性動揺性高血圧学生の健康, 体力及びスポーツ活動
- スポーツ行動診断検査の試案
- 幼児の身体発育及び運動能力の発達に関与する要因
- 学生のスポーツ行動の規定要因に関する研究(3) : スポーツ関連要因について
- 「多元的現実としてのスポーツ」論の構成に関する試論的考察 : 聖-俗理論等のスポーツ論に対する意味
- 中年期女性の更年期症状と運動・スポーツ
- 身体的健康のパターン分析と要因分析
- 〈総説〉スポーツ競技不安に関する初期的研究の動向 : 新たな競技不安モデル作成のために
- 所謂「楽しい体育」論の批判的検討
- スポーツ活動の実態と価値意識に関する国際比較研究(1) : 「日本的スポーツ」論の認識論的・方法論的諸課題
- 社会的健康の構成因子と関連諸要因に関する研究
- 体力の社会的規定要因に関する考察
- スポーツ社会学における体系的一般理論の意義
- 社会人の健康を規定する要因の研究
- スポーツ行動の予測因に関する研究(1) : 社会学的要因について
- Relationship between Psychological-Competitive Ability and Competitive Performance in Japanese Athletes
- 体育授業の「運動の楽しさ」に関する因子分析的研究
- スポーツ行動の予測因子としての行動意図・態度・信念に関する研究(II) : ランニング実施者と非実施者の諸属性の比較
- 健康度パターンと生活形態の関係に関する研究