ハイリスク新生児フォローアップ外来における育児困難を呈した母子への支援
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概要
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NICUから退院した児は、ハイリスク児フォローアップ研究会が提唱した共通のプロトコールに基づいて、長期的にフォローアップを行っている。それは、新生児医療へのフィードバックを一つの目的としたものではあるが、子どもの発達支援と家族の育児支援につながる場であると考えている。通常、フォローアップの頻度は3歳を境に減少するが、子どもの感情面や行動面の発達とともに、3歳を過ぎてから育児困難がより明らかとなるケースも少なくない。今回、私たちは3歳児健診以降に母子の関係性障害から生じた育児困難に対して積極的に介入した2ケースを経験した。2ケースともNICU入院中の母親自身や家庭環境の問題はなく、その後のフォローアップで子どもの発達には問題がなかったケースである。しかし、ケース1では、児が極低出生体重児であることから、なんらかの発達障害などの合併をもつ可能性の高い特殊なものとして捉え、不安が強い状態が観察されていた。そのため、発達とともに児の行動が不可解となり、それがさらに不安を呼び適切に対応できなかった。そこに自らの養育体験なども重なり、育児困難へとつながった。ケース2では、児が超低出生体重児であったため母子分離期間が長く、そのうえNICU退院後すぐに児の授乳困難があり、母子愛着形成の始まりにつまずきを経験していた。そこに未熟性のために幼児期早期に認められる発達の遅れが加わり、児への拒否感につながって育児困難につながった。母子への支援は、ケース1で母親のカウンセリングと親子相互交流療法Parent-children interaction therapy (PCIT)を、ケース2では児のプレイセラピーと両親面接を開始した。ハイリスク新生児フォローアップ外来では、乳児期早期から保護者の育児上の困難感などの把握に留意し、親子の関係性に着目して、積極的に親子関係の評価・介入をすることで、不適切な育児を回避し、児の発達を促進していくことが重要である。
- 2013-01-31
著者
-
平澤 恭子
東京女子医科大学 乳児行動発達学講座
-
高澤 みゆき
東京女子医科大学医学部小児科学
-
加茂 登志子
東京女子医科大学付属女性生涯健康センター
-
大澤 眞木子
東京女子医科大学医学部小児科学
-
加茂 登志子
東京女子医科大学女性生涯健康センター
-
竹下 暁子
東京女子医科大学医学部小児科学
-
吉川 陽子
東京女子医科大学医学部小児科学
-
寺沢 由布
東京女子医科大学医学部小児科学
-
伊藤 史ヱ
東京女子医科大学附属女性生涯健康センター
-
加茂 登志子
東京女子医科大学
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