中国湖南省におけるシナギフチョウの発見と保全に関する知見
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概要
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中国特産種シナギフチョウLuehdorfia chinensis(Leech,1893)は,中国の「国の重点保護野生動物リスト」では二級保護動物,IUCN(国際自然保護連合)レッドリストではDD(情報不足種)に指定されている.シナギフチョウ(以下,本種)は中国の長江流域および秦嶺山脈に広く分布していたが,最近,中国の地域経済の活性化にともなって,生息地が減少・分断化され,各地の個体群が絶滅の危機にあるとされているが,その実態は明らかではない.これまでに,長江流域の二次林からなる低地(<200m)および秦嶺山脈の高地(1,000-2,000m)に生息し,長江流域ではカンアオイ属の一種Asarum forbesiiを,秦嶺山脈ではウスバサイシンA.sieboldiiを寄主として利用することが知られていた.著者らは,2009年湖南省烏雲界国立自然保護区において,本種が生息することを発見した.この自然保護区は現時点で確認されている湖南省における一つの生息地と思われるが,生息状況の詳細は明らかではなかった.そこで,同保護区における本種の保全を目的として,その生息状況に関する予備的な調査を実施した.調査の結果,本種は住民が火入れや採草などを行っている草地化した山頂付近だけに生息することを確認した.一方,本来の生息地と考えられる山麓部では,保護区指定とともに樹木や竹類の伐採が禁じられて樹木が高木化したせいか,寄主植物はあるものの本種の成虫や幼虫は確認できなかった.卵や幼虫は,山頂付近でウスバサイシンからのみ確認された.寄主や生息地の標高は,秦嶺山脈の個体群に類似していた.烏雲界国立自然保護区では,保護区内に居住する住民に耕作,採草,火入れなどを認め,自然との共存を図っている.以上のことから,湖南省南部のシナギフチョウ個体群は,採草や火入れ等の人為的撹乱によって存続している可能性がある.今後は,保護区の山頂付近で採草や火入れを継続するとともに,山麓部で樹木の伐採や草刈りを実施し,食草のウスバサイシンとシナギフチョウが生育するための環境整備を行って,本種の生息状況のモニタリングを継続する必要がある.
- 2011-05-17
著者
-
広渡 俊哉
Entomological Laboratory Graduate School Of Life & Environmental Sciences Osaka Prefecture Unive
-
黄 国華
Institute Of Entomology College Of Bio-safety Science And Technology Hunan Agricultural University
-
広渡 俊哉
Entomological Laboratory College Of Agriculture Osaka Prefecture University
-
劉 国華
Wuyunjie National Nature Reserve
-
黄 国華
College Of Bio-safety Science And Technology Hunan Agricultural University
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周 紅春
College Of Bio-safety Science And Technology Hunan Agricultural University
-
譚 済才
College Of Bio-safety Science And Technology Hunan Agricultural University
-
李 密
College of Bio-safety Science and Technology, Hunan Agricultural University
-
李 密
College Of Bio-safety Science And Technology Hunan Agricultural University
-
広渡 俊哉
大阪府立大学大学院生命環境科学研究科昆虫研究グループ
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