日本産ゴマフヒメウスキヒゲナガ(新称)について
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概要
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ゴマフヒメウスキヒゲナガNematopogon robertella(Clerck,1759)は,ヨーロッパ北部からシベリア,日本の中部山岳地帯に分布している.本種が日本に分布することは最近まで知られていなかったが,Nielsen(1985)がNematopogon属の再検討の中でアメリカ国立自然史博物館に所蔵されている長野県産の2個体にもとづいて日本から記録した.その2個体はいずれも1950年代前半に中部山岳地帯で採集されたものである(1♂,上高地,19.vii.1951,六浦;1♂,志賀高原,12.vii.1953,一色).Nielsenが本種を日本から記録したのは,日本産蛾類大図鑑が出版された後で,その後も本種がまったくえられなかったこともあり,本種が日本に分布することはほとんど知られていなかったようである.そのような折,私達の一人(平野)が,1987年に長野県安房峠で本種をえていたことが明らかになったので,これによって本種が日本に分布することを再確認するとともに,Nielsen(1985)が示したヨーロッパ産の個体と,斑紋,雄交尾器などを比較した.1♂,開張14mm,長野県安曇村安房峠(1,780m),4.vii.1987,平野長男採集,大阪府立大学昆虫学研究室保管(Fig.1).前翅は茶褐色で,全体に灰白色の斑点を有すること,肛角付近の斑点がやや発達することなど.ヨーロッパ産のものと大きな差異は認められない.日本産Nematopogon属の他の2種アトボシウスキヒゲナガN.dorsiguttella(Erschoff)とウスキヒゲナガN.distincta Yasudaとは,全体的に黒っぽいこと,前述の斑点が顕著であること,明らかに小型であることなどで区別できる.雄交尾器(Fig.2)についても基本的にヨーロッパ産と差異はないと思われる.しかしながら,Fig.2E,F(矢印)に示したように,今回えられた個体にはjuxtaの基部にNielsen(1985)が"hooklike thorns"とよんだ突起が認められたが,Nielsen(1985)は本種に関してもその形状に言及していない.Nielsen(1985)が示したNematopogon属の交尾器をみると,この突起は種群を特徴づける形質になると考えられるので,今後本属の種を扱う場合,この突起の形状についても注目すべきである.
- 1995-12-10
著者
-
広渡 俊哉
Entomological laboratory, Graduate School of life & Environmental Sciences, Osaka Prefecture Univers
-
広渡 俊哉
Entomological Laboratory College Of Agriculture Osaka Prefecture University
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