Pepliphorus cyanea(CRAMER)(鱗翅目,シジミチョウ科)の分類学的位置
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概要
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Pepliphorus cyanea(CRAMER)はニューギニアを中心にモルッカ諸島の東域,ソロモン諸島,オーストラリアの北東部などに分布し,この地域に分布するDanis属の種とよく似た斑紋パターンを有する(翅の裏面に前後翅中室付近に連なる白帯,後翅の亜外縁部に青色〜青緑色の斑紋列を持つ).本種は分類学的にもCOMMON & WATERHOUSE(1972)まではDanis属に含められており,Danis属あるいはこれから分けられた同じDanis sectionのPsychonotis属などの種と近縁であると考えられてきた.しかしながら今回雌雄交尾器を中心とした形態を詳細に比較検討した結果,本種は顕著に斑紋の異なるNacaduba sectionのNacaduba属(アマミウラナミシジミ属)の種に近縁であり,場合によっては本種をNacaduba属として扱うことも可能であるという結論に達した.すなわち,本種の♂交尾器ではbulbus ejaculatoriusがsubzonal sheathのzoneに近い背面部に位置すること,♀交尾器ではcorpus bursaeは球状で鉤状のsignaが発達し,ductus seminalisは交尾口から前方へやや離れた位置に開口し開口部へ向かうにしたがって次第に太くなることなど,Danis属あるいはPsychonotis属では認められず,Nacaduba属を特徴づける形質と全く一致する形質を持つことがわかった.特に♀交尾器の特徴はNacaduba属に固有のものであり,また翅脈相も前翅第11脈と第12脈の癒合状態を含めて基本的に同じである.本種を独立の属として扱うとすればPepliphorus HUBNER, [1819]をあてるのが正しい(SCUDDER (1875)が本種をPepliphorusのtypeに指定している).しかしながら一方でWATERHOUSE & LYELL(1915), JOICEY & TALBOT(1917), ELIOT(1973)などは現在Jamides属として扱われているeuchylas(シロオビルリウラナミシジミ)に対してPepliphorusを用いている.これはPepliphorus属がcyaneaとeuchylasの両種に基づいて創設されたことに起因するが,これらの研究者はSCUDDER(1875)のtype指定を無視しているように思われる.本稿では暫定的にcyaneaをPepliphorus属としてNacaduba属と独立の属として扱ったがこれらを同属とするかどうかという問題に関しては,現在のところ十分でない本種の亜種レベルでの解析,ならびに本種を含めたNacaduba属内の種間の系統関係を推定した上で検討していきたい.
- 1987-05-20
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