日本産Heliozela属(鱗翅目,ツヤコガ科)の5新種
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概要
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Heliozela属は日本から2種が知られている(Meyrick, 1934; Kuroko, 1982)が,本属の成虫は前翅の斑紋が単純(後縁部に三角形の小斑紋をもつだけ)で種の区別が難しい.著者らは,近年長野県,奈良県,大阪府などで採集した標本を検討した結果,外観は類似しているが交尾器の形態によって識別できる5新種を認めた.本稿では5種の成虫および交尾器を図示・記載した.いずれも,コナラ属の樹木がある雑木林で採集したが,寄生植物については明らかではない. 1.Heliozela glabrata sp. nov. カツラギツヤコガ(新称)(Figs 1A, 2) 前翅長2.9mm(ホロタイプ).前翅は青銅光沢がある灰褐色で後縁部に2つの斑紋をもち,雄交尾器のバルバは楕円形.本種は他の種より,前翅前縁基部の腹面の長毛をもたないことで他の種と区別できる.本種は大阪府の和泉石城山で採集された.2.Heliozela brevitale sp. nov. トビイロツヤコガ(新称)(Figs 1B, 3) 前翅長2.8-3.2mm(ホロタイプ:2.9mm).前翅は青銅光沢がある灰褐色で後縁部に1つの斑紋をもつ.雄交尾器のトランスティラの突起が非常に短い,エデアグスの先端部に2つの対抗の突起をもつ,マニカに1対の指抗突起をもつことから他の種と区別できる.本種は長野県,大阪府で採集された. 3.Heliozela limbata sp. nov. アシオビツヤコガ(新称)(Figs 1C, 4, 5) 前翅長3.4-3.9mm(ホロタイプ:3.5mm).前翅は青銅光沢がある暗褐色で後縁部に2つの斑紋をもつ.本種は他の種と比べ,翅の色が濃く,脚の〓節に帯状の斑紋があることで区別できる.本種は長野県,奈良県,大阪府,和歌山県,長崎県で採集された. 4.Heliozela biprominens sp. nov. ウストビツヤコガ(新称)(Figs 1D, 6) 前翅長2.7-3.3mm(ホロタイプ:3.2mm).前翅は青銅光沢がある淡灰褐色で後縁部に1つの小三角斑をもつ.雄交尾器のウンクスに2つの小突起をもつ,トランスティラの突起が長い,マニカにある複数の大きいとげで他の種と区別できる.本種は長野県,奈良県,大阪府で採集された. 5.Heliozela angulata sp. nov. ミヤマツヤコガ(新称)(Figs 1E, 7) 前翅長2.7-3.4mm(ホロタイプ:2.7mm).前翅は青銅光沢がある灰褐色で後縁部に2つの斑紋をもつ.雄交尾器のバルバの前縁部が側方に張り出す,バルバ先端部が長く内方に大さく曲がる,トランスティラの突起が比較的大いことから他の種と区別できる.本種は長野県,奈良県で採集された.
- 2006-03-20
著者
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広渡 俊哉
Entomological laboratory, Graduate School of life & Environmental Sciences, Osaka Prefecture Univers
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李 峰雨
Entomological Laboratory, Graduate School of Life and Environmental Sciences, Osaka Prefecture Unive
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李 峰雨
大阪府立大学大学院生命環境科学研究科昆虫研究グループ:(現)韓国国立樹木園
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李 峰雨
Entomological Laboratory Graduate School Of Life And Environmental Sciences Osaka Prefecture Univers
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広渡 俊哉
Entomological Laboratory College Of Agriculture Osaka Prefecture University
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