ニューロブラストーマNeuro2a細胞における海苔(Porphyra yezoensis)由来Sulfoquinovosyldiacylglycerol (SQDG)の分化とアポトーシスに対する作用
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概要
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食用海苔として加工利用される紅藻類スサビノリ(Porphyra yezoensis)の総脂質のうち約70%は,MGDG(monogalactosyldiacylglycerol),DGDG(digalactosyldiacylglycerol)及びSQDG(sulfoquinovosyldiacylglycerol)の3種のグリセロ糖脂質が占めている。これらのグリセロ糖脂質のうち,SQDGにはDNA合成酵素に対する阻害作用が報告されている。本研究は海苔(sea alga)由来のSQDG(A-SQDG)の生理機能に関する新たな知見を得ることを目的として,マウス由来神経芽腫細胞(Neuro2a細胞)の増殖と分化に及ぼす影響を検討した。 海苔由来の3種のグリセロ糖脂質(MGDG,DGDG,SQDG)はいずれもNuero2a細胞の増殖を抑制したが,その効果はSQDGで最も顕著に認められた。また,ホウレンソウ及びクロレラから分画したS-SQDG及びC-SQDGとA-SQDGの両者には同等の増殖抑制効果が認められたが,C-SQDGには増殖抑制効果が認められなかった。次に,Nuero2a細胞の分化に対する影響を神経突起形成能を指標にして検討した。その結果A-SQDGは,分化誘導剤として知られるレチノイン酸(RA)よりも,高い神経突起形成能を示した。また,S-SQDGはRAと同程度の効果を示した。しかし,C-SQDGにはその効果が認められなかった。由来の異なる3種SQDFの作用効果の差異はそれら構成分子種に起因することが予想される。また,アポトーシス誘導剤エトポシド添加に伴うcaspase-3活性上昇に対して,A-SQDG,S-SQDGとC-SQDGはいずれも阻害作用を示し,これらにはアポトーシスに由来する神経細胞死を抑制する作用を有することが示唆された。 神経細胞におけるSQDGの作用により,抗痴呆症あるいはアルツハイマー病予防に対する有用な食品由来機能性成分としてのSQDGの研究が期待される。
- 日本食品化学学会の論文
- 2003-08-29
著者
-
雪野 継代
宮崎大農
-
野口 聡子
岡山大学大学院自然科学研究科
-
秋山 淳
備前化成株式会社
-
羽田 尚彦
備前化成株式会社
-
井上 良計
備前化成株式会社
-
荒木 繁
山本海苔研究所
-
雪野 継代
宮崎大学農学部生物環境科学科
-
林 雅弘
宮崎大学農学部生物環境科学科
-
多田 幹郎
岡山大学大学院自然科学研究科
-
高畑 京也
岡山大学農学部総合農業科学科
-
井上 良計
株式会社シクロケム
-
林 雅弘
宮崎大学農学部
-
羽田 尚彦
備前化成株式会社研究開発室
-
高畑 京也
岡山大学農学部
-
多田 幹郎
岡山大学大学院自然科学研究科:(現)中国学園大学
-
多田 幹郎
原子燃料工業 Nfi照射サービス室
-
秋山 淳
シャープ株式会社デバイス技術研究所
-
秋山 淳
備前化成株式会社研究開発室
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