下顎骨の偏位を伴う顎変形症患者の左右側乳様突起の対称性について

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胸鎖乳突筋は,側頸筋のうち最大の筋であり,胸骨と鎖骨から頭蓋の乳様突起および後頭部へ走行する.また,この筋は,頭部の左右の旋回や,前後方向への屈曲の際に活動するとともに,頭位の保持に関与する持続的な運動機能をも有する.胸鎖乳突筋の停止部の乳様突起と顎顔面形態との関係についての研究や,顎の偏位のない乾燥頭蓋骨を用いて乳様突起の垂直距離を調べた研究はみられるが,顎変形症患者の乳様突起についての研究は現在まで見当たらない.そこで本研究では,胸鎖乳突筋の停止部の乳様突起に着目し,CTを用いて顎偏位のある患者の乳様突起の対称性と下顎骨の偏位との関係を調べた.被験者は本学附属病院に来院し,下顎側方偏位を伴う成人の顎変形症患者16名とした.CTを撮影後,定位画像診断システムを用い画像処理を行った.乳様突起の計測項目として頭蓋骨上に設定した基準平面(FH平面,前頭面,正中矢状面)を用いて左右側乳様突起の垂直距離,前後距離,および左右距離を計測した.なお,前頭面は左右側卵円孔の最前方点を通り,FH平面に垂直な平面とした.各基準平面から計測した乳様突起の垂直距離,前後距離,左右距離における偏位側と非偏位側間の比率を求めた.下顎骨の偏位状態はMeと正中矢状面との距離(Me偏位距離),FH平面とCT上における左右の前下顎角隆起の外下縁点を結んだ線(Ag line)とのなす角度(垂直下顎骨偏位角度),前頭面とCT上におけるAg lineとのなす角度(軸位下顎骨偏位角度)とした.計測の結果,Me偏位距離と乳様突起の垂直距離の間で有意な相関がみられた.また,軸位下顎骨偏位角度と乳様突起の垂直距離の間で有意な相関がみられた.以上の結果より,下顎骨の体軸方向の偏位が顎変形症患者の乳様突起の高さと関連する可能性が示唆された.
2007-03-25

下顎骨の偏位を伴う顎変形症患者の左右側乳様突起の対称性について

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