開咬を伴う骨格性下顎前突症の術後再評価について

概要

論文の詳細を見る
外科的矯正治療において下顎枝矢状分割法は, 咬合と顔貌の改善に優れた術式として多用されている. 今回, 開咬を伴う骨格性下顎前突症2例について本術式を施行したところ, 手術後の下顎前方骨片や咬合の安定性に異なった経過を示したので, その原因の追究を試みた. 症例1では, 下顎前方骨片の位置や咬合関係は安定な術後経過をたどった. 症例2では, 顎間固定中に後もどりと思われる下顎前方骨片の時計回りの回転移動が起こり, 下顎前歯, 小臼歯部に挺出が生じた. この後もどりの原因は, 下顎前方骨片の移動に伴って周囲軟組織に過度な伸展が生じたためと考えられた. 下顎前方骨片の移動様式には初診時の形態的特徴が大きな要因となるので, 神山らの開咬の分類を用いて症例の再評価を試みた. 症例1は, 初診時の形態的特徴より骨格性開咬に分類されるが, 上顎前歯部歯槽突起の延長によってoverbiteがある程度補償されている症例であるため, その補償によって本術式による下顎前方骨片の移動に無理がなく, 良好な結果を得たと考えられた. 一方, 症例2は, 下顎前歯の低位による歯槽部性の開咬に分類されるが, この症例に対して本術式を単独施行したために後もどりが生じたと考えられた. これらのことから, 開咬を伴う骨格性下顎前突症の治療には, 神山らの開咬の評価方法に従った診断法を併用し, 周囲軟組織に過度な伸展を与えないような治療方法を選択することも必要であることが明らかとなった.
大阪歯科学会の論文
1990-08-25

開咬を伴う骨格性下顎前突症の術後再評価について

スポンサーリンク

概要

著者

関連論文

スポンサーリンク