歯列矯正装置が磁気共鳴画像に及ぼす影響についての検討
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
歯列矯正装置が磁気共鳴画像装置(以下,MRIと略す)に及ぼす影響について,多岐の材料の組み合わせを実験的に検討した.試料および方法として,プラスチック製歯列模型にブラケット3種類(スチール,セラミック,レジン)とワイヤー4種類(スチール, NiTi,ヒートアクチベートNiTi,ベータTi),リガチャー2種類(スチール,エラスチック)を組み合わせた装置を作製の上,1.5Tesla MRI装置を使用し,6種類の撮像シーケンス(以下,撮像法と略す)で撮像した.得られた画像で障害について,信号強度の変化と信号欠損の大きさ,信号欠損直近のひずみ,3次元構築像でのゆがみの計測を行い,以下の結果を得た.すべての部品がスチール製の矯正装置を装着した場合にGR-T2法で極端な信号強度の低下を示し,画像の表示が困難となった.同じ組み合わせで最大の信号欠損を形成し,磁場方向で160mm,左右方向で145mm,上下方向では137mmに達した.セラミック・ブラケットにスチール以外のワイヤ一をエラスチック・リガチャーで結紮した場合は障害像を発生しなかった.スチール・ブラケットを装着した場合,MRIのすべての撮像で磁場方向に100mm以上の信号欠損を形成し,特にSE-T1法で広範囲に影響した.信号欠損周囲では縮小傾向で0.62倍,膨張傾向で1.58倍のひずみを示し,影響は広範囲に及んだ.3次元像ではスチール・ブラケットを装着した場合には,他の材料に関わらずほぼ10mm以上のゆがみを示し,その最大値は13.7mmであった.スチール製歯列矯正装置を用いた場合に最大の金属障害が発生するのはスチールが常磁性体であり,磁場断面積が大きいためである.しかし,スチール・ブラケット単独の場合でも大きな金属障害を生み出し,ブラケット相互間の電気的短絡がない状態でも障害を生ずる.したがって,磁力線に対する影響は相乗効果かあるものと考えられる.MRI検査を用いる可能性のある歯科矯正治療患者には,スチール製矯正装置を避け,他の材料の装置作製が必要である.また,撮像法はFSE法やFGR法を用いるべきであると考えられる.
- 大阪歯科学会の論文
- 2008-03-25
著者
-
松本 尚之
大阪歯科大学歯科矯正学講座
-
四井 資隆
大阪歯科大学歯科放射線学講座
-
四井 資隆
大阪歯大・歯科放射線
-
松本 尚之
大阪歯大・歯科矯正
-
森川 康之
大阪歯科大学歯科矯正学講座
-
四井 資隆
川植歯科医院
-
四井 資隆
大阪歯科大 歯 歯科放射線学
関連論文
- P-3 QCMナノセンサによる唾液関連タンパク質と歯科材料の吸着挙動(研究奨励賞応募ポスター発表)
- 1 破骨細胞分化における長時間作用型NO供与体の影響(第519回大阪歯科学会例会)
- 上顎大臼歯の挺出と下顎骨のclockwise rotationによる治療を行った骨格性下顎前突症例
- 徐放化骨形成因子を用いた顎裂閉鎖術に関する実験的研究
- 下顎歯槽骨の構造と咬合力,咬筋および顎顔面形態との関係について : コーンビームCTを用いた評価
- 3 正常咬合者における咬合力および下顎骨形態と三次元的顔面形態との関連について(第511回 大阪歯科学会例会)
- 顎顔面形態と内側翼突筋との関係
- MRI解析による咬合力とかみしめ時の顎関節空隙の変化
- 広範囲におよぶ侵襲性歯周炎患者へのGTRの対応
- 〓骨々折受傷直後の〓鼻により顔面ならびに頸部に皮下気腫を併発した1例
- 強直性脊椎炎ならびに顎関節症の関与によると思われた開口障害の1例
- P-3 QCMナノセンサによる唾液関連タンパク質と歯科材料の吸着挙動(研究奨励賞応募ポスター発表,第55回日本歯科理工学会学術講演会)
- 11 下顎第一大臼歯の遠心傾斜が下顎第二大臼歯の萌出方向に与える影響(第505回 大阪歯科学会例会)
- 顎骨間関係骨格性I級顔面非対称症例の外科的矯正治療
- 大阪歯科大学附属病院における過去10年間の口唇裂口蓋裂を有する矯正患者の統計的観察 : 第2報
- 移転歯の一矯正治験例
- 組織誘導再生法が歯の移動に及ぼす影響
- 上顎歯槽突起裂および口蓋裂を伴う正中上唇裂の一治験例
- 日本人学童の顎顔面頭蓋の成長発育に関する研究
- 口唇裂口蓋裂を有する矯正患者の歯の異常 : -大阪歯科大学附属病院矯正歯科における5年間の統計的観察-第2報 埋伏歯の発現頻度
- 1 成人片側性口唇口蓋裂患者の顎顔面形態について
- 成人片側性口唇口蓋裂者の顎顔面形態について
- 片側性口唇口蓋裂患者の顎顔面形態について : 主成分分析を用いて
- 口唇裂口蓋裂を有する矯正患者の歯の異常 : -大阪歯科大学附属病院矯正歯科における5年間の統計的観察-第1報 顎裂部位と歯数異常の発現頻度
- 1 ラットの上顎歯列弓拡大時における鼻中隔軟骨の顔面頭蓋への影響に関する研究 (第438回 大阪歯科学会例会)
- ラットの上顎歯列弓拡大時における鼻中隔軟骨の顔面頭蓋への影響に関する研究
- 1 マルチブラケット装置が磁気共鳴画像装置に及ぼす金属アーチファクトについて(第520回大阪歯科学会例会)
- A-26 スパッタ法による歯科材料QCMナノセンサの開発(器械・技術,一般講演(口頭発表),第54回日本歯科理工学会学術講演会)
- 歯科矯正治療後に下顎頭後面のリモデリングを認めた骨格性下顎前突症患者の顎機能および画像評価
- A-36 高感度QCMチタンセンサの開発(臨床応用2・器械・技術,第52回日本歯科理工学会学術講演会)
- 7 歯列矯正装置が磁気共鳴画像に及ぼす影響についての検討(第512回 大阪歯科学会例会)
- 歯列矯正装置が磁気共鳴画像に及ぼす影響についての検討
- wedge effect の定量化と顎顔面形態との関係
- 3DXにより判明した歯根形態異常の埋伏永久切歯の2例
- 下顎骨の偏位を伴う顎変形症患者の左右側乳様突起の対称性について
- 側貌の審美的感覚に関する研究 : 第二報 上顎前突および下顎前突患者に関する調査
- 習慣性咀嚼側と咬筋の形態および顎顔面形態との関係について
- 顎顔面形態と咬筋との関係について : 骨格性下顎前突症患者と個性正常咬合者との比較
- 側貌の審美的感覚に関する研究 : 第一報 一般人,矯正医,矯正患者に対する調査
- 10 下顎骨の偏位を伴う顎変形症患者の左右側乳様突起の対称性について(第506回 大阪歯科学会例会)
- 個性正常咬合者における咬合力と顎顔面形態との関係
- 5 顎顔面形態と内側翼突筋との関係(第501回 大阪歯科学会例会)
- 大臼歯咬合面への荷重位置が咀嚼筋活動量 : 咬合力の関係を変動させる
- MRIによるヒト外側翼突筋の形態観察
- 磁気共鳴画像における歯科用金属修復物によるアーチファクトの実験的検討
- CCDデジタルパノラマX線画像システムの至適撮影条件について
- 多数の永久歯萌出遅延を伴った骨系統疾患の1症例について
- 歯根破折の診断に関する歯科用小照射野X線CTの有用性の検討
- 顎関節腔内病変のCT内視鏡による観察
- 口腔MRI用 Phased array coil の試作・検討 : その1 信号強度とSNR
- 顎骨骨折を伴う小児の外傷について : 骨折部位における後継永久歯の動向
- 小児期における顎関節部の形態的発育について : 咬合誘導時の下顎窩の観察
- MR像における歯科用金属のメタルアーチファクトに関する研究
- 小児外傷の特徴 : 特に骨折部位における後継永久歯の動向について
- 小児の下顎骨骨折
- 1 パノラマ顎関節4分割撮影の画像向上の試みとその評価 (第414回 大阪歯科学会例会)
- 顎顔面形態と咬筋との関係について
- MR像における歯科用金属のメタルアーチファクトに関する研究 : 第二報 アーチファクトの三次元的解析
- 1 顎変形症における3 D-CTのofflineシステムの確立 (第453回 大阪歯科学会例会)
- 磁気共鳴画像における歯科用金属鋳造冠によるアーチファクトの実験的検討(第488回大阪歯科学会例会)
- 顎関節症の形態的誘因に関する検討
- 1 顎関節症の形態的誘因に関する検討 (第455回 大阪歯科学会例会)
- 11 顎関節断層X線規格写真の立体的再構成による顎関節診断精度の向上 (第401回 大阪歯科学会例会)
- 乳歯列反対咬合の治療時における顎関節部の変化について : チンキャップ装着による効果と影響
- 7 磁気共鳴画像の撮像時における表面コイルの位置付けに関する実験的検討(第485回 大阪歯科学会例会)
- 6523 磁気共鳴画像の撮像時における表面コイルの位置付けに関する検討
- 歯列矯正装置が磁気共鳴画像に及ぼす影響についての検討(大阪歯科大学大学院歯学研究科博士(歯学)学位論文内容要旨および論文審査結果要旨の公表)
- 水頭症を伴った Crouzon 症候群の一症例
- 下顎窩の成長発育について : 関節結節と関節後突起の高さ
- 下顎窩の成長発育について : 関節結節と関節後突起の高さ
- 歯根未完成埋伏下顎第二小臼歯の矯正予後 : エックス線写真による長期観察
- 成長期における咬合挙上比の値とその変化について
- 1 顎関節症患者の顆頭運動の分析 (例会抄録(第427回))
- 顎変形症に対する3D-CTの利用 : 第1報 3D-CTの再現性の評価
- 骨格性下顎前突症状の治療にスケレタルアンカレッジシステムを用いた場合の有効性
- 過蓋咬合を伴う上顎前突症例
- 三次元顔面軟組織形態の定量化 : 4横断面での評価
- セファロ分析の標準値を用いたANB角の補正法
- 成人矯正患者および成長期の矯正患者における必要咬合挙上量(IIDD)について
- 歯科用エックス線撮影装置の品質管理を目指した実態調査
- 先天性欠如による歯冠近遠心幅径総和の過大を伴う骨格性下顎前突症の治療例
- 歯根破折片を金属針で連結した上顎中切歯の矯正移動 : エックス線写真による追跡
- 顎関節症の形態的誘因に関する検討
- RAW264細胞の破骨細胞分化におけるIL-17の影響
- 顎間ゴム装着時の外側翼突筋下頭の筋電図学的研究
- 多発傾向を呈した骨形成線維腫の一例
- Actinomyces oris MG-1 株の矯正線への付着に及ぼす糖の影響
- 矯正力に対するラット顎下腺唾液中のストレスマーカーの変化
- 下顎前歯の水平的, 垂直的位置に留意した過蓋咬合を伴う上顎前突症例
- 電撃様関節痛と開口障害が長期に持続した顎関節症の1例
- 動物実験に用いるためのタバコ煙成分捕集法の試み
- P-10 ナノサイズの焼成アパタイトの開発とそのコーティング材としての応用(研究奨励賞応募ポスター発表,第60回日本歯科理工学会学術講演会(創立30周年記念大会))
- ヒト由来脱分化脂肪細胞の骨芽細胞分化能の評価
- ヒト歯肉由来線維芽細胞のMMP-1産生に及ぼす p38 MAP kinase の影響
- 電撃様関節痛と開口障害が長期に持続した顎関節症の1例
- 外科矯正した骨格性下顎前突症例における側面セファロ上「嚥下三角」の安定性
- 唾液細胞の矯正装置装着時における形態学的変化
- AktのRANKL刺激による破骨細胞分化に及ぼす影響
- 外科矯正した骨格性下顎前突症例における側面セファロ上「嚥下三角」の安定性
- 矯正線表面における Actinomyces oris MG-1 株のバイオフィルム形成