外科矯正した骨格性下顎前突症例における側面セファロ上「嚥下三角」の安定性
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概要
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外科矯正が摂食・嚥下機能に及ぼす影響を探るため,嚥下時の咽頭と喉頭の挙上に伴う喉頭蓋による喉頭口の閉鎖に着目した.下顎骨後退術施行・骨格性下顎前突症例5名の動的治療開始前(T1群),手術直後(T2群),動的治療終了時(T3群)と対照群としての個性正常咬合者5名(N群)の側面セファロ(計20枚)上にH(舌骨),E(喉頭蓋),P(咽頭後壁:計測の便宜上,喉頭口閉鎖時に喉頭蓋が接すると仮想する点)を頂点とする嚥下三角を設定した.下顎骨後退術による三角各辺の長さ,各頂点の位置,三角相当領域の気道幅径の変化について個性正常咬合者との比較を交え推計的に評価した.すべての計測項目において,T1〜T3の3群で分散分析を,またそれらとNの各2群でt検定を行った.その結果,以下の可能性が示唆された.(1)下顎骨後退術は骨格性下顎前突症例の嚥下三角の形態に顕著な影響を及ぼさないとともに,骨格性下顎前突者と個性正常咬合者の嚥下三角は形態的に顕著な相違を認めない.(2)下顎骨後退術は骨格性下顎前突症例の嚥下三角の位置に顕著な影響を及ぼさない.(3)下顎骨後退術は嚥下三角相当領域の気道幅径に顕著な影響を及ぼさない.さらに個々の症例の動的治療開始前,手術直後,動的治療終了時の側面セファロ上嚥下三角のSN平面(S起点)と頸椎(C1〜C4)での重ね合わせを行ったが,嚥下三角は総じて,SN平面での重ね合わせでは手術直後に後下方へ移動した後,前上方へ移動する様相を,また頸椎での重ね合わせでは軽微な上下移動を主体とする様相を呈し,その概要は外科矯正後の長期観察安定症例で認められたとされる舌骨の位置変化と類似していた.本研究を通じて示唆される嚥下三角と同部,すなわち下咽頭(咽頭喉頭部)相当領域の気道幅径の外科矯正に対する安定性は,呼吸(気道確保)や嚥下機能維持の恒常性の高さに起因するものと考察する.嚥下三角の安定性は治療結果の安定性に繋がる可能性もある.
- 2013-03-25
著者
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