ラットの上顎歯列弓拡大時における鼻中隔軟骨の顔面頭蓋への影響に関する研究
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概要
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顎顔面頭蓋部に存在する growth site の一つであるところの鼻中隔軟骨の軟骨性成長は, 顎顔面頭蓋の成長や上顎骨および下顎骨の位置の決定に対して重要な役割を果たしていると考えられてきた. 今回, ラットの上顎歯列弓を拡大することにより, 顎顔面頭蓋および鼻中隔軟骨細胞とその周囲組織の経時的変化について観察した. 実験には, 4週齢のSD系雄ラット150匹を用い, ラットの上顎歯列弓拡大を行った. 拡大力が50gと100gとの群にわけて実験群とし, 同様の装置を装着し, 拡大を行わないものを対照群として, おのおの50匹ずつ用いた. ラットは実験期間がそれぞれ1日, 1週, 4週, 7週, 10週の群にわけ, 動物用セファロスタットを用いて1週ごとに頭部エックス線規格写真を撮影し, 形態学的に検索した. またH-E重染色を行い, 組織学的に観察した. 結果は以下のとおりであった. 頭部エックス線規格写真の計測値について多重比較検定を行った結果, 実験群では脳頭蓋に対する顎顔面頭蓋の成長方向が前下方から前方へと変化したことを認め, 実験群間では臼歯間の距離以外に変化は認められなかった. 頭部エックス線規格写真の経時的な観察の結果, 成長方向の変化は拡大後2〜4週時をピークとしていることを認めた. 組織学的観察の結果, 鼻中隔軟骨細胞およびその周囲組織には, 対照群と比較して, 実験群では実験開始後1日および1週に著明な変化が認められたが, 4週では組織学的変化に差が少なくなり, 7週以後では変化は認められなかった. 以上の結果から, ラットの上顎歯列弓拡大は顎顔面頭蓋の成長発育の方向に変化を生じさせることがわかった. またその経時的な形態変化と鼻中隔軟骨細胞の活性とその時期には少しのずれが認められたものの, 顎顔面頭蓋の成長発育に鼻中隔軟骨が関与していたことが示唆された.
- 大阪歯科学会の論文
- 1994-12-25
著者
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