組織培養系による耐病性ジャガイモ系統の育成(第1報) : ジャガイモのカルス誘導と植物体再生
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概要
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ジャガイモ品種ダンシャクの組織培養条件,とくにカルス誘導およびその植物体再分化に及ぼす植物ホルモンの影響を調べた。培養には,ジャガイモの塊茎,茎および葉から作製した外植片を使用し,オーキシンとしては2,4-D,IAAおよびGA_3を,またサイトカイニンとしてはK(カイネチン)およびBAPを添加したMurashige-Skoog(MS)培地を用いた。培地はpHを6.0,寒天濃度を0.8%とし,また,温度は26±2℃,照度は3,000〜4.000lxで全日長照明とした。ジャガイモ塊茎からのカルス誘導は,2,4-DとKまたはBAPを組合せたMS培地で観察されたが,それにGA_3を添加すると,さらにその誘導日数が短縮された。しかしながら,増殖度の高いカルス組織を長期間にわたって継代,維持する場合には,GA_3の添加よりも2,4-Dの濃度を高くする方が有効であった。このような増殖良好カルスをオーキシン濃度を低くした培地で培養すると不定根の誘導と伸長が観察されたが,この場合,Kを添加した培地ではカルス組織が褐変するため,BAPを示加する必要があった.一方,上記の方法で誘導したカルスからは,2,4-DあるいはIAAのいずれのオーキシンをGA_3その他のサイトカイニンと組合せても,幼苗(shoot)の分化は観察されなかった。今後,さらにその条件を検討する必要がある。ジャガイモの茎外植片を培養した結果では,上記塊茎外植片で良好な結果を得た培養条件を用いても,それがカルス化する日数は長く,また誘導されたカルス組織の増殖も概して不良であった.ジャガイモ葉外相片を2,4-DとBAPを添加した培地で培養したところ,カルス化には塊茎の場合よりも若干長い培養日数を必要としたが,それがいったんカルス化した場合には,増殖が良好でfriableなカルス組織を得ることができた。このようなカルス組織をIAA, BAP, GA_3などを添加した培地に移植した場合には,多くのホルモン区で緑色小斑が形成され,またshoot分化も観察された。shootからは小葉が分化し,その小葉が展開するとともに,同一ホルモン組成培地においても活発な不定根の伸長が観察され,効率よく再生幼植物を得ることができた.このような幼植物は,一定期間温室で馴化させれば,土壌環境でも良好に生育する。以上のように本研究では,ジャガイモの各組織からカルスを誘導するための条件のみならず,葉外植片カルスから植物体を再分化させる条件をも明らかすることができた.
- 近畿大学の論文
- 1987-03-15
著者
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