高知県産褐毛和種の血統構造と血液ならびに乳蛋白質型の遺伝的変異
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概要
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高知県産褐毛和種は, 高知県のみを繁殖圏とする特色ある地方種である。現有頭数は繁殖雌牛3,500頭, 育成雌牛1,500頭であり, このような閉鎖小集団が将来, 近交退化の顕在化による集団の衰退が懸念される。本研究はその繁殖集団の実態を明らかにするため, 高知県内の主要生産地である嶺北地区, 室戸・安芸地区, 幡多地区の雌牛394頭について, 血統構造と血液蛋白質6座位, 乳蛋白質5座位の遺伝的変異性を調べた。結果は次の通りである。1) 特定種雄牛の遺伝的寄与率は, どの地区でも岡岩とその息牛第二岡岩が高い。地域的にみれば, 嶺北地区はその他に同系統から分かれた梅系(梅・幡王)と, 由来の異なる司長系(司長・第二司長・司山)の貢献が大きい。室戸・安芸地区では, 岡岩系以外に日ノ出系(日ノ出・清風・清月・第5清月)の寄与率が高い。幡多地区では, 上記のすべての系統の種雄牛が寄与している他に, 王城系(王城・崎山・招福・福山)の寄与率が高い所に特色があった。2) 近交係数は, 嶺北地区5.85%, 室戸・安芸地区5.34%, 幡多地区3.06%であった。3) 血液蛋白質型では, Tf座位に特色があり, どの地区の産牛でもTf^<D2>の頻度が50%以上であった。地区別にみると, Hb座位で幡多地区と他の2地区との間に, TfとCp座位で嶺北地区と他の2地区との間に有意差が認められた。4) 乳蛋白質型は, β-Lg座位に特徴があり, β-Lg^Aの遺伝子頻度は3地区とも10%以下であった。[table] 5) 各地区ごとに血液および乳蛋白質11座位の遺伝的均質度を求めると, 嶺北地区0.583,室戸・安芸地区0.575,幡多地区0.586であり, 地区間に大きな差はなかった。本研究は, 文部省科学研究費57860061によって行ったものである。研究の逐行に当っては, 高知県畜産試験場, 高知県中央・東部・西部各家畜保健衛生所ならびに嶺北畜産協会の職員各位の御協力を得た。ここに記して深甚なる謝意を表する次第である。
- 神戸大学の論文
著者
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