主成分分析法およびクラスター分析法による黒毛和種種雄牛における血統構造分析の可能性(畜産学)
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概要
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現在, 黒毛和種においては全国の和牛育種組合を母体に集団育種事業が推進されている。その際, 繁殖牛群の血統構造を明確にし, 系統を客観的に分類することが交配計画の樹立に必須である。本報告では, 近年生物学の各分野で広く利用されている多変量解析法を用いて, 黒毛和種種雄牛の血統構造の分析と系統分類の可能性とを検討した。材料としては, 間接検定済み種雄牛125頭およびそれらの始祖牛30頭の血統情報を用いた。種雄牛相互間の相加的血縁係数行列(A行列)はHEIJDENら(1979)の算法により算出した。このA行列に対し主成分分析法を適用し, 各種雄牛ごとの因子負荷量を求め, 種雄牛の分類を行った。さらに, 類型の各要素がどのような過程を経てグループを形成するかを明らかにするために, 血縁係数に対してクラスター分析の階層的手法の1つである, Single linkage法を適用した。得られた結果は以下の通りである。1. 種雄牛の近交係数の平均は, 兵庫県産種雄牛が7.7%と最も高く, 次いで, 島根県産および鹿児島県産種雄牛がそれぞれ6.8,4.9%であった。他県産種雄牛の平均値はいずれも3.0%以下にすぎなかった。種雄牛相互の血縁係数の平均を生産県別に見ると, 兵庫県18.7,鳥取県13.7,岡山県7.9,広島県6.5,島根県10.9,鹿児島県8.9,宮崎県4.5,大分県16.0%であった。生産県相互の血縁係数の平均は, 兵庫県産種雄牛と広島県産種雄牛の間で5.2%, 鳥取県産種雄牛と鹿児島県, 宮崎県および大分県産種雄牛との間で, いずれも4.1%以上であった。2. 主成分分析法により, A行列の3主成分を算出したところ, これら3主成分による寄与率は19.6%と低かった。しかしながら, 各種雄牛の因子負荷量の散布図により, 種雄牛を明確に分類することが可能であった。すなわち, 第1,第2,第3主成分はそれぞれ兵庫県産, 鳥取県産および岡山県産グループの因子と見なすことができた。さらに, 各グループの種雄牛は, その始祖牛との相対的な位置関係により, サブグループを形成した。クラスター分析では, 系統の階層的な様相が明らかになった。類似度0.25では, 11グループに層別することができ, 主成分分析による分類結果と良く一致していた。類似度0.30では, 16グループに分化し, 兵庫県産以外の種雄牛を系統分類することが可能であった。兵庫県産種雄牛は, 類似度0.50においても, ようやく3群に分化したにすぎなかった。すなわち, 一般に系統と称されているが, その遺伝的関連性はかなり異なっており, 系統分類に際しては類似性の遺伝的基準が重要であることが示唆された。以上の結果から, 両分析法を用いることにより, 黒毛和種種雄牛の血統構造を客観的に分析することが可能であると考えられる。本研究は一部文部省科学研究費No.476205の援助により行ったものである。
- 神戸大学の論文
- 1981-01-30
著者
-
向井 文雄
神戸大学農学部
-
向井 文雄
Graduate School Of Science And Technology Kobe University
-
福島 豊一
神戸大学農学部
-
福島 豊一
神戸大 農
-
並河 澄
京都大学農学部
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