ホルスタイン種雄子牛の集約的肥育方式に関する研究
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概要
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本邦における市販配合飼料を用いて, 生後1週間前後のホルスタイン雄子牛から飼育期間1か年以内に精肉用として通用しうる枝肉(枝肉重量240∿260kg)を生産する可能性と, その育成・肥育過程における技術的・経済的問題点を明らかにすべく, 生後約1週令の雄子牛10頭を用いてこの試験を行なった。なお, 生後91日令より供試牛を各5頭ずつ区分し, 第I区にはキングビーフ前および後期を, 第II区には肉牛1および2号をいずれも自動給餌して上記の問題点を比較検討した。その概要は次のごとくである。1. 供試牛は原則として生体重450kgに到達した翌週にと殺したが, 全飼育日数の平均は第I区333.2日, 第II区365.2日で, 当初の目的通り, 生後1か年以内で450kg以上に肥育することができた。2. 1日当たり増体重は全期間で第I区1.24kg, 第II区1.13kgで第I区がすぐれていたが, その差は主として肥育期に生じたものであって, 両区に用いた飼料の配合内容と嗜好性の差に基くものと思われる。3. 飼料採食量は両区間に大差がなかったが, 肥育期における1日当たり濃厚飼料採食量は第I区9.94kg, 第II区8.46kgで, キングビーフ後期は肉牛2号よりも採食性がよく, これが上記の1日当たり増体重ならびに後述の枝肉諸形質, 枝肉単価に大きな影響を及ぼしている。4. 全期間に摂取したDCPは第I区274.5kg, 第II区298.3kg, TDNは第I区1856kg, 第II区1789kgであった。また, 全期間を通じて増体1kgに要したDCPは第I区0.66kg, 第II区0.73kg, TDNは第I区4.49kg, 第II区4.38kgで, 両区ともきわめて良好な飼料の利用性を示している。5. 枝肉諸形質について第I区と第II区を比較すると, 枝肉重量はそれぞれ268.6,257.4kg, 枝肉歩止まり61.4,60.1%, 背脂肪1.5,0.8cm, 胸部脂肪1.9,1.7cmで, 全般的に肥育度の高い第I区がすぐれていたが, ロース芯面積は39.0,41.2(cm)^2で第II区がすぐれていた。6. 脂肪交雑はプラス1程度で, このため枝肉規格による格付けは「上」の1頭を除きすべて「中」であったが, 枝肉の均称, 肉付き, 脂肪の付着, 肉の色沢, きめ, しまりはいずれもほぼ良好であり, 脂肪の色沢および質は優良であった。7. 飼料費は第I区96,144円, 第II区91,463円と第I区が高いが, 1kg当たりの枝肉単価は第I区589円, 第II区562円であり, 結局肥育差益では第I区54,064円, 第II区46,072円と第I区がすぐれていた。また両区ともこの差益は1か年以内の肥育としては満足しうるものと思われる。以上のごとく, 濃厚飼料を自動給餌することにより, 飼育期間12か月以内で精肉用として十分通用しうる枝肉を生産でき, しかも, 平均約5万円の肥育差益を上げうることが明らかとなった。今後の問題としては代用乳の品質的改善, 安価な単味飼料配合による飼料費の節減などをさらに研究する必要があるものと思われる。また本邦産のホルスタイン種の産肉能力は諸外国の同品種に比較して必らずしも劣るものとは考えられない。
著者
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