黒毛和種の産肉能力改良のための体測定値に基づく選抜指数式の有効性

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黒毛和種の産肉能力の改良を目標とした体測定値に基づく選抜指数式(間接選抜指数式)を導出し, それと現行の能力検定あるいは後代検定から期待される産肉形質の遺伝的改良量とを比較し, 体測定値の選抜指標としての有効性を検討した。材料としては, 1971年から1976年度にかけて西日本に位置する9検定場所で実施された127頭の黒毛和種雄牛の産肉能力検定間接法の成積である732頭の去勢後代の発育ならびに枝肉形質を用いた。分析対象とした産肉形質は, 一日平均増体量, 枝肉重量, 枝肉歩留, ロース芯面積, 脂肪交雑, 背脂肪厚の6形質である。体測定値としては, 検定開始時から4週あるいは3週おきに計12回(266+28n日齢(n=0,1,……, 10)および567日齢)にわたり測定された, 体重および体高, 十字部高, 体長, 胸囲, 胸深, 胸幅, 尻長, 腰角幅, 〓幅, 坐骨幅, 管囲の11部位を対象とし, 同時に検定期間(301日間)を4期に区分し, 各期間中の相対成長率(Relative Growth Rate)をも分析に供した。得られた結果の概要は以下の通りである。1). 1産肉形質を改良目標とした場合;一日平均増体量や枝肉重量を改良目標とした体測定値の絶対値に基づく間接選抜指数式から期待される遺伝的改良量は, いずれの測定日齢においても能力検定あるいは後代検定から期待される遺伝的改良量よりも優れていた。しかし, 相対成長率を用いれば効果はかなり低下した。脂肪交雑に対しては, 266日齢から434日齢時の絶対値に基づく間接選抜指数式が後代検定よりも優れていたが, それ以降の絶対値あるいは相対成長率に基づく間接選抜指数式の有効性は低下した。ロース芯面積, 枝肉歩留, 背脂肪厚については, いずれの日齢の絶対値, 相対成長率に基づく間接選抜指数式も後代検定から期待される遺伝的改良量を上回ることはなかったが, 体測定値を単独に指標とするよりも期待される改良量は大きかった。2). 2産肉形質を改良目標とした場合;枝肉重量とロース芯面積, 脂肪交雑とロース芯面積の組み合わせを改良目標とし, ロース芯面積以外に標準偏差単位で5倍の重要度を加えた場合の間接選抜指数式, あるいは枝肉重量と脂肪交雑の組み合わせを改良目標とした間接選抜指数式は当該形質の後代平均に基づく選抜指数式から期待される遺伝的改良量を上回った。なお, 枝肉重量を重視した場合は518日齢時, 脂肪交雑を重視した場合には350日齢時の間接選抜指数式からは後代平均に基づく選抜指数式よりも約20%高い遺伝的改良量が期待できた。一日平均増体量と脂肪交難の組み合わせにおいても有効性が高まる時期は類似していたが, 有効性の度合は約13∿14%と若干低下していた。ロース芯面積や背脂肪厚を重視した場合の間接選抜指数式の効果は, 後代平均に基づく選抜指数式から期待される遺伝的改良量の40∿80%程度と低かった。3). 導出した間接選抜指数式の構成から「体型」指標を探ると, 改良目標とする形質の組み合わせや, 体測定値がいずれの発育段階に測定されたかによってかなりの相違が認められたが, 基本構造としては胸囲と管囲が相対的に大きく, 肉量を重視するならば尻長と〓幅の比率が大きい個体, 一方, ロース芯面積を重視するならば体伸のあまり長い個体は好ましくないという結果であった。脂肪交雑あるいは背脂肪厚を重視すれば深み, 後躯長のある個体が望まれる。いずれの産肉形質に対しても胸幅, 腰角幅, 坐骨幅が相対的に大きい個体は遺伝的に好ましくないことが認められた。4). 間接選抜指数式は正確度の面から, 一日平均増体量, 枝肉重量および脂肪交雑に関しては後代検定以上の効果が期待できるとともに, 選抜強度や世代間隔をも改善し得る可能性があり, 正確度が劣るロース芯面積や背脂肪厚に関しても有効に利用できることが明らかになった。一方, 間接選抜指数式から個々の産肉形質に期待される相関反応量は, 改良目標とする形質組み合わせ, 体測定値の測定日齢に大きく依存することから, 牛群ごとの育種目標や選抜時期に応じて間接選抜指数式を再構築する必要があることも明らかであった。

黒毛和種の産肉能力改良のための体測定値に基づく選抜指数式の有効性

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