黒毛和種閉鎖育種集団における繁殖雌牛の体測定値の遺伝的趨勢
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概要
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兵庫県北部の美方郡に飼養されている黒毛和種「但馬牛」は長期にわたり完全な閉鎖集団として維持されてきた.ところが,この集団の育種の成果,すなわち遺伝的趨勢についての検討は今日までなされていない.そこで,BLUP法アニマルモデルによって,雌牛の体測定値について育種価評価を行ない,雌牛サイズの遺伝的趨勢を明らかにした.材料は本集団において生産され,1921年から1990年にかけて登録された雌牛18,942頭と雄牛619頭である.この内,13,527頭の雌牛が体高と胸囲を,11,275頭がかん幅の記録をも備えていた.雄牛ならびに記録を持たない雌牛は評価時の血統連結用の個体として利用した.遺伝率は,種雄牛モデルによる多形質REML法により,体高で0.297,胸囲で0.104,かん幅で0.116と推定された.環境的趨勢を誕生年の効果で見ると,第2次世界大戦の影響で急激に悪化した.その後,1960年代に入り,肉専用種へと用途転換され,飼養管理技術の改善による顕著な効果が認められた.次に,雌牛の育種価評価値の平均の誕生年への回帰によって遺伝的趨勢を推定した.1930年代から戦後までは体高,胸囲,かん幅の3測定値共に遺伝的水準の変化は認められなかった.登録が全国的に一元化された1948年以降には育種価の上昇が認められ,体高で0.035cm/年,胸囲で0.035cm/年,かん幅で0.013cm/年の割合で増加した.1948年の集団平均に対する変化率ではそれぞれ0.03, 0.021, 0.034%と推定された.雄牛の検定が開始された1968年以降を見ると,体高の遺伝的改良量のみが0.063cm/年,変化率にして0.052%と加速されたが,胸囲とかん幅の育種価の増加率は雄牛の検定の開始前後で差異は認められなかった.本集団における1970年以降の雌牛サイズの表型上の増加の内,体高は遺伝的効果に負うところが大きいものの,胸囲とかん幅における遺伝的効果は10〜30%程度で,多くが飼養管理技術の改善に起因することが明らかになった.
著者
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辻 荘一
神戸大学農学部
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太田垣 進
兵庫県立農林水産技術総合センター
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向井 文雄
神戸大学農学部
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向井 文雄
Graduate School Of Science And Technology Kobe University
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岡西 剛
神戸大学農学部
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太田垣 進
兵庫県立農業技術センター畜産試験場但馬分場
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