黒毛和種における妊娠の影響を考慮したLogisticモデルおよびそのパラメーター推定値と繁殖性との関係

概要

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妊娠•分娩•泌乳と生理的状態が大きく変化する繁殖雌牛の発育様相を把握するためには,それらの影響を考慮した発育モデルを適用することが望ましい.そこで,妊娠の影響を加味したLogisticモデル(以下,G-Logisticと略す)を作成し,従来のLogisticモデル(以下,Logisticと略す)と適合度および推定パラメーターの比較検討を行った.あわせて,推定成熟値(A),成熟速度(k)と雌牛の繁殖性との関係を見た.材料牛は,昭和43年以降に岐阜県種場で繁殖に供用されてきた98頭の黒毛和種雌牛である,用いた測定値は平均9.4か月齢から50.4か月齢にかけて約1か月おきに測定された体重と11部位の体測定値および初回分娩日齢,平均分娩間隔,生産供用年数当たりの平均産子数である.適合個体の割合を見ると,G-Logisticでは自由度調整済み寄与率が0.80以上の個体割合は,胸幅•坐骨幅•管囲以外の測定部位で87〜99%の範囲にあり,Logisticに比べいずれの体測定値についても適合個体割合は増加した.特に,体長•胸幅•坐骨幅および管囲では倍増した,また,Logisticで多数認められた収束解の得られない個体も減少した.残差平均平方は体重で434.22kg2から328.08kg2へと低下し,自由度調整済み寄与率の平均も0.93から0.95へと改善された.このような傾向は胸囲•胸深•体幅でも認められた.しかしながら,体高•十字部高•体長•尻長の残差平均平方はわずかながら増加した.両モデルの推定成熟値(A),成熟速度(k)を比較すると,LogisticのAはいずれの体測定値においてもG-Logisticのそれに対し過大に評価され,逆にkでは過小に推定される傾向にあった.妊娠にともなう増加率λは,体重の0.095から管囲の-0.001の範圏にあり,これから分娩時の牛体の大きさへの影響を推定すると,体高•十字部高•体長•管囲を除き,妊娠しない場合の発育値の2%以上の増加となり,特に体重では9.96%と大きかった.G-Logisticから推定されたAおよびkと雌牛の繁殖性との相関は,体重•胸囲ならびに後躯幅のAと平均分娩間隔とは正(r=0.29〜0.44),生産供用年数当たりの平均産子数とは負(r=-0.39〜-0.26)の有意な相関係数を示した.一方,kは平均分娩間隔と総じて負の相関(r=-0.40〜-0.04)を示した.また,後躯幅のkは生産供用年数当たりの平均産子数と正の相関(r=0.20〜0,25)を示す傾向が認められた.
社団法人日本畜産学会の論文

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