モモのさし木繁殖における根原体発達の解剖学的観察
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概要
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モモ優良台木の大量繁殖を前提とした, さし木繁殖技術確立のための基礎的資料を得る目的で, 長野県下伊那地方産野生モモ (ネコブセンチュウ抵抗性) の緑枝ざし及び休眠枝ざしにおけるさし穂の不定根形成過程を組織学的に調査し, 併わせてコハク酸脱水素酵素活性の組織化学的調査も行った.発根はミスト繁殖装置下の緑枝ざし, 底熱処理した休眠枝ざしともIBA処理により促進された.さし穂基部の組織的変化は緑枝ざし, 休眠枝ざしとも置床後5日目に, 初生根原基 (root initials) が形成層外側の二次師部柔細胞より分化し, 前者では10〜14日目までに, 後者では7〜11日目までに組織化された細胞群,すなわち根原体 (root primordia) に発達した. 根原体は発根前に根の形態を整え, 頂端分裂組織及び前形成層ストランドでコハク酸脱水素酵素活性が強く認められた. さらにさし穂茎部の新生木部と維管束連絡した幼根は, 緑枝ざしではさし穂の主軸に対してほぼ直角に, 一方休眠枝ざしでは, 鉛直方向に伸長して発根した.発根開始時期は緑枝ざしは置床後17日目, 休眠枝ざしは13日目であった. 緑枝ざしの発根はさし穂基部切断面ばかりでなく, 茎部表皮からもみられた. 一方, 休眠枝ざしはさし穂基部でのカルス形成が盛んで, 発根部位は基部切断面に限定された.以上の結果から, 枝梢組織の調査による厚膜繊維の連続性は, 初生根原基の分化, 発達などのいわゆる発根能力そのものに影響を及ぼすものではないと推定された.
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