スマトラのホームガーデンにおける有用植物の利用

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スマトラは, 人口密度が低いだけでなく, 北部にはキリスト教を信仰する種族が存在し, また南部には広大な湿地帯があるなど, その自然的, 社会的条件はジャワ島とは大きく異なる.これらの相違はホームガーデンでの植物の利用にも違いをもたらしていることが考えられた.このような観点から, 雨季の始めに北スマトラのメダン郊外におけるジャワニーズ(イスラム教徒)とカロニーズ(主としてキリスト教徒)の各7園, 及び南スマトラのパレンバン郊外におけるプガガニーズ(イスラム教徒)の8園で, ホームガーデンの大きさや耕地の所有面積, 有用植物の種数と栽植本数, 家畜の種類及びその数, バナナの種類などを調査した.ホームガーデンの大きさ並びに水田や畑地の所有面積は北スマトラよりも南スマトラでやや大きかった.ニワトリは調査した多くの園で飼育されたが, ブタはカロニーズでしかもキリスト教徒の園だけに存在した.本調査で観察された有用植物は果樹29,野菜17,デンプン作物12,香辛料植物15,薬用食物11,工芸作物10,観賞植物60及びその他の植物14の計168種で, このうち北及び南スマトラには各々148種と83種が存在した.ジャワニーズ, カロニーズ及びプガガニーズの各園における総種数は各々21〜43(平均32), 24〜47(34)及び21〜42(30)であった.栽植密度(本数/m^2)はジャワニーズでは0.45,カロニーズでは0.31及びプガガニーズでは0.24とジャワ島よりも著しく低く, 特に南スマトラで低かった.用途別では, 果樹が南北いずれの園, 特に南スマトラで多かったのに対し, 観賞植物は北スマトラ, 特にカロニーズの園で多かった.野菜とデンプン作物は種数では少なかったが, 栽植本数では比較的多かった.ジャワニーズではその他の植物が, またプガガニーズでは工芸作物とその他の植物が種数, 栽植本数ともに著しく少なかった.種数や栽植本数の点からみて, 果樹はホームガーデンを構成する最も重要な作物であり, 特にバナナは各園とも料理用を含めて1〜7種を有し, とりわけ北スマトラでの利用が大きかった.しかし, 副次的な果樹はほとんど観察されなかった.以上の結果から, 植物利用の点からみてスマトラのホームガーデンにおける生産性は低く, 特に南スマトラで低いことが推察された.これは, スマトラでは日常生活に必要な食物や収入をホームガーデン以外の土地, 例えば水田や畑地に依存している割合が高いためと思われた.
日本熱帯農業学会の論文
1992-09-01

スマトラのホームガーデンにおける有用植物の利用

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