柿樹の栄養生理的研究(第 1 報) : 無機成分の体内分布ならびに吸収量の季節的変化について(農学部門)
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概要
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1.柿栽培における施肥の合理化を進める資料をえる目的で, 1957∿58年にわたり富有, 次郎, 会津身不知の成木を供試して, 無機成分の体内分布, 各部位の含有率および吸収量の季節的消長を調査した。2.枝葉, 果実の新成組織内の含有率は旧生部より高く, 生育時期別にみた場合に, 発育初期の含有率は後期に比べて高い傾向が認められた。3.葉内含有率はNはほぼ生育初期に高く生育期間中は多少の増減はみられるが大きな変化はなく着果の影響も少ない。Pは生育当初に高く以後漸減の傾向を示すが, 幼果の生育が急速に進む頃に着果枝内含有率が低下し6月下旬頃にその傾向が著しい。KについてはN, Pに比べて当初高くなく季節的消長はNより大きいものであつたが, 着果によつて会津身不知では減少するが, 富有では必ずしも減少せずむしろ8月中旬頃ではかえつて高い結果を認めた。4.新梢内では生育当初の含有率は高く以後漸減しているが, Nについて着果の影響は少なく, P, Kについては着果によつて多少低下する傾向が認められた。5.果実内ではNは花蕾発生初期より果実発育第I期頃まで含有率が高く以後漸減する傾向があり, Pは初期に高く第I期頃よりわずかに減少し, Kは当初Nより少なく第I期終期頃より増加しN含有率より高くなるが, 生長後期にはやや減少の傾向が認められた。6.葉内吸収量については, N, Kでは吸収量も多くその増減も大きいが, Pは吸収量およびその変化も少なかつた。その季節的消長は各要素とも生長にともなつて吸収量は増加するが, 6月中下旬に一時やや低下しその後ふたたび増大するが, 8月下旬以降は漸減する傾向を示した。このことは展葉後の新梢の伸長および果実肥大に由来するものと思われるが, 葉内吸収量は両品種とも着果枝は生育当初ほぼ無着果枝より高いが, 生長後期では富有では着果枝が会津身不知では無着果枝が高い傾向が認められた。7.果実内吸収量は果実肥大とともに増大し, 8月中下旬にやや劣り9月中旬以降ふたたび増加するが, 特にKはN, Pに比べてこの傾向が著しい。8.枝葉, 果実を含む新梢1本当たりのN, P, Kの吸収量は, 展葉より7月中旬頃まで著しく増加しやがて8月下旬までやや減少するが, 9月初旬頃よりふたたび増大する。新梢生長期および生育後期の増加が大きく, K, Pは9月下旬頃に最高となり, Nは6月下旬∿7月中旬に高くなつた。会津身不知では吸収量の最大となる時期が富有より約1カ月程度おくれる傾向がある。9.生長周期を新梢伸長期, 果実発育第I期, 第II期, 第III期に区分して, 各時期別の1日当たり平均吸収量をみると, 両品種とも新梢伸長期および果実発育第I期に吸収量が大となり, 第II, III期ではやや低く一時とどまる傾向が認められた。その吸収量最大期は富有では着果枝が第I期, 無着果枝が新梢伸長期となり, 会津身不知では着果枝が新梢伸長期, 無着果枝では第I期であつた。
- 京都府立大学の論文
- 1962-09-01
著者
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