著明な溶血性貧血,間質性腎炎,低γ-globulin血症を呈したphenacetin中毒症の1例
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概要
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症例は33才,男. phenacetin (acetophenetidin)含有鎮痛剤を大量に長期服用し, 10年間の服用量はおおよそphenacetin 2kg, aminopyrine 0.7kg, barbiturate 0.3kgと算定され,全身倦怠感を主訴として入院した.検査により著明な溶血性貧血,慢性間質性腎炎および低γ-globulin血症が認められた.服薬中止により貧血は改善の傾向を示したが,腎障害の改善は見られなかつた. phenacetin服用に基因する溶血性貧血の機序としては, 1) G 6 P D欠損症を基盤とするもの, 2)自己免疫的機転,あるいは, 3)赤血球に対する直接作用,などが考えられているが,本例においては1), 2)は否定的で, phenacetin大量かつ長期服用に基づく, 3)の機転によるglutathione reductase, methemoglobin reductaseを含む赤血球酸化還元機構の障害による機序が強く示唆された.一方,腎障害については, 1953年Spühier.らが間質性腎炎の症例を報告して以来,現在まで海外で2000例を越すphenacetin nephropathyの報告がある.本症例の腎障害については, acetylsalicylic acid (ASA)を患者は全く服用しておらず, phenacetinのみによる可能性が大きい, phenacetinによる低γ-globulin血症の報告は無く, phenacetinの服用に関連するものか否かについては今後の検討にまちたい.本邦におけるphenacetinによる臓器障害の報告は希で,とくに溶血性貧血の合併例は未だ報告されていない.腎障害については3例の報告があるが,本例の如く定型的な腎炎の組織像を呈し,腎不全の治療のために透析を要するに至つたほどの症例はない.
- 社団法人 日本内科学会の論文
著者
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柴田 整一
東京大学医学部第三内科
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小坂 樹徳
東京大学医学部第三内科
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作田 学
杏林大学神経内科(第一内科学教室)
-
作田 学
東京大学医学部第三内科
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木全 心一
東京大学医学部第三内科
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千葉 省三
東京大学医学部第三内科
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千葉 省三
東京大学医学部中尾内科
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柴田 整一
東京大学医学部中尾内科教室
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小坂 樹徳
東京大学医学部第3内科
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柴田 整一
東京大学医学部中尾内科
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木全 心一
東京大学医学部冲中内科
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