南極ドームふじにおける1995年から2006年の表面質量収支の特徴
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概要
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1995年1月25日に南極ドームふじに36本雪尺(20m間隔で100m×100m)が第36次南極地域観測隊により設置され,それ以来雪尺の高さが継続的に測定されてきた.ドームふじ基地で越冬観測を実施した4年間(1995年1月から1997年12月及び2003年1月から2004年1月)は月2回測定し,それ以外は年1回の測定(1月上旬が多い)を実施した.この結果,1995年から2006年までのドームふじの年平均表面質量収支は,27.3±1.5kgm^<-2>a^<-1> であることが推定できた.これは,ドームふじ浅層コアから推定された西暦1260年から1993年までの平均値(26.4kgm^<-2>a^<-1>)と近い値であった.また,ドームふじでは1年後に雪尺の高さが等しいかもしくは高くなっている「負の年間表面質量収支」が8.6%の確率で起こっていることがわかった.南極内陸に位置するボストーク,南極点,ドームCでの同様な観測結果と比較することにより,負の年間表面質量収支は年平均表面質量収支の増加とともに減少し,190kgm^<-2>a^<-1> 以上の地点ではで負の年間表面質量収支は95%の信頼水準で起こらず,正の年平均表面質量収支が期待できることがわかった.190kgm^<-2>a^<-1> 以上の年平均表面質量収支は地域により異なるが,現在の南極氷床ではおおよそ標高1500-2500mに相当するので,この標高域では毎年の積雪が氷床に記録されている地点が多いことが推定できた.一方,ボストークでのピット観測結果を参考にして,現在及び氷期のドームふじコアでの年層欠損確率をそれぞれ9.4%,11.4% と見積もった.この他に,ドームふじで1本の雪尺を1年間観測した時に得られる年平均表面質量収支の誤差,10年後の再測定で得られる年平均表面質量収支の誤差などを論じた.
- 2008-06-30
著者
-
亀田 貴雄
北見工業大学社会環境工学科雪氷研究室
-
本山 秀明
情報・システム研究機構国立極地研究所
-
藤田 秀二
情報・システム研究機構国立極地研究所
-
高橋 修平
北見工業大学社会環境工学科雪氷研究室
-
高橋 修平
北見工業大学
-
本山 秀明
国立極地研究所
-
藤田 秀二
国立極地研
-
亀田 貴雄
北見工大
-
本山 秀明
極地研
-
Saito T
Institute Of Low Temperature Science Hokkaido University
-
本山 秀明
情報・システム研究機構 国立極地研究所
-
本山 秀明
北海道大学低温科学研究所
-
亀田 貴雄
北見工業大学
-
Kameda T
Kitami Inst. Technol. Hokkaido Jpn
-
本山 秀明
National Institute of Polar Research
-
Kameda Takao
Institute Of Low Temperature Science Hokkaido University
-
Kawamura Toshiyuki
Department Of Applied Physics Faculty Of Engineering Hokkaido University:(present Address)institute
-
藤田 秀二
国立極地研究所:総研大極域科学専攻
-
Kameda T
Department Of Civil Engineering Kitami Institute Of Technology
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