ブライド湾とセールロンダーネ山地間の氷床地形(英文)
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概要
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1983年2月12日から17日の期間, 第23次および第24次南極地域観測隊は, セールロンダーネ山地における本格的な地球科学的調査の予備調査として, ブライド湾からセールロンダーネ山地の間の氷河地形学的調査を行った。その結果と過去のベルギー隊の得た結果を併せて下記のような推論を行った。ブライド湾からセールロンダーネ山地の間の氷床は, セールロンダーネ山地によって内陸からのクィーンモードランド氷床流が阻止され, 理論的に示される平衡氷床高度分布より著しく低く, セールロンダーネ山地の溢流氷河の涵養量は少ない。ブライド湾周辺の棚氷の縁辺の形状は, 1960年作成のベルギー隊の地図とほとんど変化がなく, 同一形状の棚氷の位置の変位から棚氷の移動速度を求めると, 北方へ56-126m/aであった。1967年から1973年の間に旧ロア・ボードワン基地と棚氷の前縁との間に大きな断裂帯が形成されていたが, その原因は不明である。将来, この断裂帯が広くなり, ブライド湾の棚氷は氷山となって分離していく可能性が考えられる。ブライド湾とセールロンダーネ山地の間の氷床の質量収支を近似的に求めた結果, この氷床の涵養源の一部は, 現在の大量の積雪量であることが推定される。もし, 現在の積雪量が著しく減少し, 氷床表面高度の低下が発生すると, 氷床の厚さが減じて現在の接地線(grounding line)が後退するであろう。そして, 氷床が氷山となって分離していく速さを加速するであろう。なぜならば, 氷床底面は内陸深くセールロンダーネ山地近くまで海面下に位置すると考えられるからである。問題をはっきりさせるためには, 氷床基盤の調査が重要である。
- 国立極地研究所の論文
著者
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高橋 修平
北見工業大学社会環境工学科雪氷研究室
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高橋 修平
北見工業大学
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西尾 文彦
国立極地研究所
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石川 正雄
北海道大学
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大前 宏和
北海道大学大学院理学研究科
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勝島 尚美
北海道大学教養
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大前 宏和
北海道大学低温科学研究所
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石川 正雄
Institute Of Low Temperature Science Hokkaido University
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勝島 尚美
住鉱コンサルタント
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