219 高速位置決めアクチュエータの機構形状とコントローラの統合化設計

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磁気記録媒体の記録密度の増加に伴い,磁気ディスクへの磁気記録の記録再生評価を行う磁気記録評価装置(スピンスタンド)では,磁気ヘッドの高速・高精度位置決め技術が要求される.現在,スピンスタンド上で多様なHead Gimbal Assembly (HGA)の性能評価を高速・高精度に行うため,装置本体のHGA支持機構の先端部には積層型圧電素子(PZT: Pb(Zr,Ti)O_3)と平行リンク形状の変位拡大機構を組み合わせたアクチュエータが搭載されている.しかしながら,このアクチュエータを高速で駆動することによりHGAの高速位置決めを行おうとすると,駆動反力によってアクチュエータの固定部が加振され,固定方法に工夫が必要となるといった問題が生じる.この問題は,今後より一層の高速・高精度位置決めを実現する上で,ますます深刻なものとなるであろう. この問題に対して,著者らは,先の研究においてアクチュエータの機構全体が直交する二つの軸に対称となる機構を提案し,その有効性を示した.この機構は,二つのPZTと菱形リンク形状の変位拡大機構により構成される.しかしながら,菱形リンク形状を採用した変位拡大機構の設計は,回転対偶としてヒンジ部の弾性変形を利用したリンク形状を前提として機構各部の寸法が設計されている.このため,アクチュエータの性能は,初期設定した変位拡大機構の骨格となるリンクおよびヒンジの配置に大きく依存してしまっている.そこで著者らはさらに,先の研究において変位拡大機構の形状の設計にリンク形状を前提としない,より自由度の大きい設計法として,変位拡大機構の形状を骨要素と肉要素から形成されるものと定義し,形状探索を行うことにより,構造物の骨格を初期設定することなしに,設計自由度の大きい形状設計を効率良く行う手法を提案し,設計を行った.図A1に菱形リンク機構および新たに形状設計された新機構の構造を示す.両機構とも制御対象とコントローラからなる閉ループ系の性能を考慮した統合化設計法に基づいて設計されている.本研究では,図A1に示した二つの機構を試作し,基礎特性の検証実験を行った.そして,両機構のモデル化を行い,各制御対象に対してコントローラを設計し,設計されたそれぞれの閉ループ系に対して,制御対象の摂動に対するロバスト性の検証を行い,菱形リンク形状機構に対して設計された閉ループ系より新形状機構に対して設計された閉ループ系の方が,加法的摂動によるモデル誤差に対するロバスト性がH_∞ノルムで約1.3倍優れていることを確認した.
2006-08-06

219 高速位置決めアクチュエータの機構形状とコントローラの統合化設計

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