ウスバシロチョウの翅長変異に影響を及ぼす気候要因
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概要
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1. ウスバシロチョウの翅長変異と気候の関係について調査した.1991年に岐阜県周辺の20個体群から採集した雄の前翅長を測定した.幼虫期における気候の指標として4月の平均気温と降水量を選び, 孵化時期を左右する指標として3月の最深積雪量をそれぞれメッシュ気候値から取り上げた.2. 本種は分布上で食草の異なる二つの集団に分けられた.そのうち, ムラサキケマン依存型集団では個体群間で前翅長の変異が顕著に見られた.一方, 高い標高に分布するヤマエンゴサク依存型集団では前翅長は一般に小さく個体群間の変異も小さかった.3. ムラサキケマン依存型集団では4月の平均気温と前翅長の間に有意な正の相関(r=0.880, P<0.01)が得られ, 3月の最深積雪量とは有意な負の相関(r=-0.718, P<0.05)が得られた.また, 降水量とは有意な相関が認められなかった.一方, ヤマエンゴサク依存型集団では調査した気候要素と前翅長の間にいずれも有意な相関は認められなかった.4. 以上の結果から, ムラサキケマン依存型集団では幼虫期の気温が前翅長に影響を与えて各地の有効温量に適した前翅長を持ち, ヤマエンゴサク依存型集団では有効温量の減少に対する小型化の適応限界にある可能性が示唆された.
- 日本昆虫学会の論文
- 1996-06-25
著者
-
桜井 宏紀
岐阜大学農学部生物生産システム学科
-
桜井 宏紀
岐阜大・農
-
武田 享
岐阜大学大学院連合農学研究科生物環境科学
-
河合 和幸
岐阜大学大学院連合農学研究科生物環境科学
-
桜井 宏紀
岐阜大学大学院連合農学研究科生物環境科学
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