相関論理Rcにおける連言-含意のパラドクスおよび選言-含意のパラドクスの証明不可能性について
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概要
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帰結関係、あるいは十分条件関係「もし...ならば」は人間の思考において中心的な役割を果たしている。十分条件関係の真理値あるいは妥当性は、前件と後件の真理値によってだけでなく、むしろ前件と後件の必然的相関関係によって決められるべきである。古典数理論理では実質含意という真理値関数を用いて十分条件関係を表現しているため、その公理と論理定理に実質含意に関するパラドクスが多数内在している。相関論理は、"AやBの真偽を知ることなくA→Bの真を知ることができる"というWright-Geach-Simpley基準に基づいて、十分条件関係のより自然な形式化のために構築された論理である。このような論理体系としては、AndersonとBelnapの体系TとEとRが最も良く知られている。これらの論理体系の特徴は、十分条件関係を自然に表現する内包的な基本論理結合子をもっていて、論理定理が実質含意に関するパラドクスを持たないということである。相関論理は実質含意に関するパラドクスを持っていないため知識の表現と推論にとって適切なものと思われていた。しかし、近年になって実質含意のパラドクスとは別のパラドクスを持っていることが指摘された。それは連言-含意パラドクスおよび選言-含意のパラドクスと呼ばれるものである。例えばTやRやEなどの論理体系の論理定理として存在するA∧B→Aについて、前件に、後件Aの真偽に何の関係もないBが連言項として存在している。この場合、Bについては何の制約もなく、後件Aの否定である¬Aであってもかまわない。A∧B→Aを妥当な論理定理とすれば、"雪は白く、かつ1+1=2であるならば、雪は白い""雪は白く、かつ1+1=3であるならば、雪は白い""雪は白く、かつ雪は白くないならば、雪は白い"のようなものを妥当な十分条件関係と認めざるをえなくなってしまう。従来の相関論理にある典型的な連言-含意、および選言-含意に関するパラドクスには、(A∧B)→A、(A∧B)→B、A→(A∨B)、B→(A∨B)、(A→B)→((A∧C)→B)、(A→B)→(A→(B∨C))などがある。相関論理Rcは連言-含意および選言-含意のパラドクスを持たない論理体系として提案され、相関論理Rを改良したものである。Rcの公理と推論規則は以下のとおりである。Rcの公理図式:Rc01 A→A、Rc02 (A→B)→((C→A)→(C→B))、Rc03 (A→(A→B))→(A→B)、Rc04 (A→(B→C))→(B→(A→C))、Rc05 (A→(¬B))→(B→(¬A))、Rc06 (¬(¬A))→A、Rc07 (A∧A)→A、Rc08 (A∧B)→(B∧A)、Rc09 ((A→B)∧(A→C))→(A→(B∧C))、Rc10 (A∧(A→B))→B。Rcの推論規則:R1 Modus ponens:AとA→BからBを得る、R2 Adjunction:AとBからA∧Bを得る。本論文はRcにおいて上記の連言-含意のパラドクスおよび選言-含意のパラドクスが証明不可能であることを示す。
- 一般社団法人情報処理学会の論文
- 1995-09-20
著者
-
牛島 和夫
九州産業大学情報科学部
-
牛島 和夫
九州大学 システム情報科研究
-
程 京徳
九州大学 工学部
-
大堀 順也
現在, NTTコミュニケーションウェア(株)技術開発部所属
-
大堀 順也
現在 Nttコミュニケーションウェア(株)技術開発部所属
-
大堀 順也
九州大学 工学部
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