牛乳および乳蛋白質におよぼすγ線照射の影響(第1報) : γ線照射によるカゼインの物理化学的性質の変化ならびに乳糖共存の影響について

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放射線照射による牛乳の新しい利用性を確立するために,牛乳成分の放射線照射効果を多方面から解明する必要がある.かかる観点から,乳蛋白質の主成分であるカゼインの,γ線照射による物理化学的性質の変化を究明することを目的として実験を行なった.本実験では, 1%カゼイン単独溶液を試料溶液Iとし, 1%濃度の乳糖が共存するカゼイン溶液を試料溶液IIとして照射実験を行なった.本実験で得られた結果は次のように要約することができる. (1) γ線照射により,試料溶液Iの相対粘度は, 3 Mradまで照射量とともに上昇し, 3〜5 Mrad照射では相対粘度が低下した.一方,試料溶液IIの相対粘度は,照射量とともに低下する傾向にあった. (2) 移動界面電気泳動分析の結果,試料溶液Iでは2Mrad, 5Mrad照射でα峰とβ峰が1つになり,新しい峰を生じ,未照射試料溶液Iのα峰を100としたときの相対易動度は,照射によって大きな変化は認められなかった.また,試料溶液IIでは, 2 Mrad照射してもα峰とβ峰が出現し, 5 Mrad照射では1つの峰となり,相対易動度は照射により小さくなる傾向にあった. (3) 照射試料溶液の超遠心沈降図は1つの峰を示し,照射によっても峰の分割は起らず,沈降定数は照射によって大きくなり, 5 Mrad照射では未照射の2.5〜2.8倍になった.また,試料溶液IIの方がIに比して大きな値となった. (4) 照射試料溶液の紫外部吸収スペクトル図では,照射による最大吸収波長のずれはほとんど認められず,吸光度の増大のみが認められた.とくに, 5 Mrad照射で吸光度の増大は著しく,試料溶液Ilは大きな値を示した.また,照射試料溶液の差スペクトルの結果では, 2 Mrad照射により, 270〜290mμに僅かな負の吸収を示し, 290〜330mμで正の吸収を示した.一方, 5 Mrad照射では, 260〜330mμでかなり高い正の吸収を示した.
社団法人日本農芸化学会の論文

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