日本•韓国在来馬の免疫学的特性に関する研究
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概要
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日本•韓国の在来馬7品種を対象として,体液性免疫応答を中心とした免疫学的特性を追求し,免疫用動物としての利用の可否について検討した.まず在来馬のヒト赤血球に対する自然抗体および,virusや細菌に対する特異抗体の保有状況から自然抗体を検索し,次にヒト培養リンパ球を注射してその抗体産生能から人為感作刺激による体液性免疫応答を追求し,つづいて産生抗体の特異性について検討した.1) ヒト赤血球凝集素の自然抗体は調査7品種の各個体ともほとんどこれを保有し,与那国馬•トカラ馬の1•2頭には認められなかった.またヒト白血球凝集素および細胞障害性凝集素については北海道和種馬•木曽馬•対州馬•済州馬および軽種馬にそれぞれ認められたが,10%〜20%で低く,木曽馬では40%であった,ヒト赤血球凝集素はもちろんヒト白血球凝集素および細胞障害性凝集素の保有率については,品種間差は認められなかった(P>0.05).また,これらの自然抗体の価はヒト赤血球凝集素では4倍〜64倍に分布し,ヒト白血球凝集素および細胞障害性凝集素ではそれぞれ2倍〜4倍であった.これらの抗体価の品種間差は,その保有率の場合と同様に,それぞれ認められなかった(P>0.05).virus,インフルエンザに対する特異抗体の保有率とその価は品種により異り,一定の傾向はみられず,馬パラチフス抗体は各品種全個体に認められなかった.これらの特異抗体の保有率と抗体価については,それぞれ品種相互間(済州馬を除く)の差はほとんど認められなかった(P>0.05,保有率の北海道和種馬•木曽馬間P<0.05,抗体価の木曽馬•対州馬間P<0.05).供試済州馬は日本脳炎virusに対する特異抗体を全個体保有していたが,これはいずれも日本脳炎に対する予防接種をしているためである.2) 北海道和種馬,済州馬および御崎馬にヒト培養リンパ球を注射したところ,細胞障害性抗体では前2者において免疫後1週で抗体が産生され,その価は32倍であった.その後早期に抗体価は上昇し,北海道和種馬では5週で2,048倍,済州馬では4週で4,096倍の最高抗体価を示した.御崎馬では抗体の産生が遅れ2週で8倍〜16倍で最高抗体価も7週で1,024倍であった.白血球凝集素の産生状況も細胞障害性抗体の場合と同様の傾向であった.3) 済州馬にヒト培養リンパ球を免疫した場合その量は北海道和種馬に比べ,少量でも抗体価の高い抗体が産生された.4) 北海道和種馬,御崎馬および済州馬にヒト培養リンパ球を注射して得られた抗ヒトリンパ球抗体ALGの特異性について検討したとにろ,ALGの細胞障害性抗体では個体差が若干認められたが,大体同様な特異性を有していた.また白血球凝集素においても一部高い価を示すものもあったが平均抗体価は3者同様であった.なお北海道和種馬および済州馬のALGでは,非特異的凝集素が完全に除去され精製後の残留もなくすぐれたALGと考えられる.要するに日本および韓国の在来馬は自然感作,人為感作の免疫に対して軽種馬と同様にすぐれた抗体産生能を有する.したがって,これらの在来馬はALSおよび血清製剤作製用の免疫用動物として利用し得るものと考えられる.
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