馬血清トランスフェワン蛋白量の変動 : 季節的,個体内,トランスフェリン型間および品種における変動について
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概要
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馬血清トランスフェリン(Tf)蛋白量の差異から,通常のTf型とsilent geneをもつTf型をより明確に識別するため,各要因によるTf蛋白量の変動について調べた.すなわち,検体の採取時の違いによる季節的並びに個体内の年間の変動について調査すると同時に,Tf型の違いおよび品種の達いによって異なるかどうかについて調べた.その成績は次の如くである.1, 通常のTf型の個体内におけるTf蛋白量変動の最高値と最低値との差(変動幅)は約32〜92mg/dlの間,また,最高値および最低値と平均値間の差はそれぞれ14.8〜53.7mg/dlの間であった.一方,silent geneをもつTf型ではその変動幅は小さく約25〜32mg/dlの間,また,後者の平均値との間における差は8.9〜18mg/dlの間であった.2, 調査に用いた12個体のTf蛋白量の測定値はいずれもP=0.05における棄却限界の範囲内であり,それらの変異係数は3.7〜8.7%であった.3, 季節的にはTf蛋白量に著しい変動が認められなかった.4, 軽種馬における15型のTf型間のTf蛋白量は,易動度の速いD,FおよびHバンドの組合わせからなるDF型,FF型,FH型およびHH型が平均値で約370〜390mg/dlの間にあり,高い値を示すグループであったのに対し,易動度の遅いRバンドを含むDR型,FR型,OR型およびRR型が平均値で約310〜330mg/dlの間にあり低い値を示すグループであった.これら2群の間には有意差が認められた(P<0.001)。5, ホモ型のTf蛋白量はFF型,HH型,OO型,DD型およびRR型の順に高く,それぞれの平均値は382.4±2.9, 370.1±9.7, 352.6±5.2, 347.7±1.2および312.3±7.9mg/dlであった,6, Tf型間にTf蛋白量の差が存在することから,silent geneをもつTf型を識別する場合は通常のホモ型と,これに対応するsilent geneをもつTf型との間で,Tf蛋白量を比較する方がより明確な識別が期待できる.7, サラブレッド種,アングロアラブ種,重種,北海道和種,木曽馬およびポニー種の6品種間には明確なTf蛋白量の差は認められなかった.
- 社団法人 日本畜産学会の論文
著者
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三浦 信義
競走馬理化学研究所分子遺伝
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桑島 正夫
競走馬理化学研究所
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横浜 道成
競走馬理化学研究所
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茂木 一重
競走馬理化学研究所
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細田 達雄
競走馬理化学研究所
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井上 正春
競走馬理化学研究所
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三浦 信義
競走馬理化学研究所
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