家鶏の心臓に関する比較心電図学的検討

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家鶏心室の興奮伝播様式の心電図学的解析と特殊心筋の分布状態を組織学的に検索し.両者の相互関係を吟味する目的で,QRS群の波形が家鶏と類似しているヤギと,著しく相違するイヌについても同様な接近を試み,家鶏心臓の比較心電図学的な検討を行った.家鶏の心外膜面単極誘導心電図のQRS群は左,右心室ともに陰性要素を主体とするQS型またはrS型が支配的である.心外膜面での興奮の伝播はまず右心室心尖部および前壁中間部に始まり心底部に向かって拡がる.左心室ではまず中間部が興奮し,心尖部および心底部に拡がる.一方右心室の心外膜面の興奮は心内膜面より数msec遅れる.左心室心尖部では心外膜面の興奮は心内膜面に比べて数msec遅れるが,中間部では心外膜面が早く興奮し,心底部では再び心内膜面の興奮が数msec先行する.家鶏,ヤギの心外膜面全域の興奮がA-B誘導心電図のQRS持続時間の前半に位置しているのに対して,イヌでは後半に位置し,しかも前2者では心尖部から心底部に至る興奮の伝播には部位による顕著な遅延はみられない.すなわちイヌと異なり家鶏,ヤギでは短時間内に興奮が心外膜全域に伝播することが認められた.家鶏とヤギの心室遊離壁のプルキンエ線維は心内膜下に限らず心外膜近くにまで広く分布しているが,イヌのプルキンエ線維は心内膜下にみられ,深層にまで入り込んでいないという差が認められた.以上の成績から家鶏の心臓は心電図学的にヤギの心臓と類似しており,イヌの心臓とは著しく異なった特徴を有することが明らかとなった.また心臓縦軸に沿ったA-B誘導心電図のQRS群がRs型を示すか,あるいはrS型を示すかの相違は心室遊離壁のプルキンエ線維が心内膜下に存在しているか,深層にまで及んでいるかの相違によるものと推察された.
社団法人日本畜産学会の論文

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