高地環境暴露に伴う自律神経活動レベルの推移

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著者らは,先に,自律神経作動薬投与に対する心血管系反応に基いて高地環境下では自律神経系の活動性に変化の生じることを示唆したが,本研究では,自律神経系の活動性と暴露期間との関係を明らかにするためにコントロールチャンバーを用いて実験を行なった.Wistar系雄ラット30匹を用い,6匹を5週齢で試験した後,12匹を暴露群として標高2,500m相当の低圧低酸素分圧条件(気圧561mmHg,酸素分圧117mmHg)下で,同数を対照群として海面相当の常圧常酸素分圧条件(気圧760mmHg,酸素分圧159mmHg)下で飼育し,両群とも3および6週間飼育した後に,各6匹ずつを試験に供した.試験は常圧常酸素分圧条件下で行ない,動物に以下の4種類の処置を施した時の心拍数を調べた.1) 交感神経遮断(propranolol 4mg/kg, i. p.)時心拍数(HRsx).2) 副交感神経遮断(atropine 2mg/kg, i. p.)時心拍数(HRsx).3) 両神経遮断(propranolol 4mgおよびatropine 2mg/kg, i. p.)時心拍数(HRspx).4)対照処置(saline 1ml/kg, i. p.)時心拍数(HRsp).暴露群のHRspxは,対照群と比べ3週暴露後に低い値を示した.両群ともHRspのレベルはHRspxよりも高く,その差は暴露の前半で暴露群が対照群と比べ大きくなり,後半では逆に小さくなった.HRsxとHRspsとの差は,暴露の前半で大きくなり,後半では逆に小さくなった.HRsxとHRspxとの差は,暴露の前半で小さくなり,後半では逆に大きくなった.以上の成績から,高地環境暴露の初期には,交感神経活動レベルの上昇と副交感神経活動レベルの減少が生じるが,その後は,逆に交感神経活動レベルの減少と副交感神経活動レベルの上昇が生じ,両神経の活動性のバランスは,暴露の時間経過に伴い変化することが示唆された.
社団法人日本畜産学会の論文

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