脱神経筋に関する筋電図学的研究(犬)
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
神経-筋系の機能を系統的に分析し, 併せて神経-筋系に起る各種の疾患の診断, 予後の判定等に筋電図法を応用するための基礎的な知見を拡充する目的で, 従来, 犬に関しては系統的な報告を欠いている中枢神経系と全く連絡を断たれた脱神経筋に現れる異常筋電図を分析した. 即ち, N.femoralis を切除し(20〜25mm), 切除翌日から約3週間に亘って, 脱神経された M. quadriceps femoris (主として, M. vastus lateralis) について, 同心型針電極誘導(1/4皮下針使用, 100ミクロン1心)と, 銀針(先端から3mm絶縁剥離)2本を使用した単極誘導(電極・間距離1cm)とによって, 脱神経後に現れる異常筋電図を検索し, 次の結果を得た. (1) 脱神経筋から誘導される異常筋電図の放電パターンは, 脱神経後の経過日数によって変化した. 即ち, 最初の4日間はいわゆる electrical silence であったが, 5日には, 繰返して放電する性質が極めて弱い散発性の放電が出現した. 次いで, 放電の密度は日を追って急激に増強し, 1週の終り頃に, 観察の全期間中で最高の放電密度を示し, その後, 放電密度は逆に漸減した. また, 脱神経筋の放電は, 電極挿入後暫く時間を経過する間に, 常にその密度を漸減 attenuation したが, 電極挿入後約3分を経過する間に, 激しい attenuation は殆んど止み, その後, 略々定常な放電が残留した(脱神経後5〜6日以降). (2) 脱神経筋表面の軽い叩打, アセチルコリン或はネオスチグミンの投与は, 脱神経筋に放電を誘起し或は放電を増強した. また, アセチルコリン或はネオスチグミンの投与によって, 周期的に規則正しい間隔で反復する放電が現れた. 叩打或はアセチルコリンの投与で誘起される脱神経筋の放電の増加は, 1週の終り頃が最も顕著であった. (3) d-ツボクラリンの投与は, 脱神経筋の放電を全て消失させた. (4) 脱神経筋から最も頻繁に誘導される単一スパイク放電の波形は, 2〜3相性で, motor unit potential に比べて, 振幅では両者間に著差を認め難かったが, 持続が著しく短縮している点が特徴的であった. このスパイク放電の放電間隔時系列は, 3型に大別された. また, 一連の長い系列を構成する部分系列が, 必ずしも全部同じ型に属ずるものであるとは限らなかった. (5) 観察の全期間中, 多相性のスパイク放電は, 単一な放電波形としては誘導されなかった.(6) 病理組織学的検査では, 脱神経筋の筋線維全般に著明な萎縮を認めたが, 変性像は全く観察されなかった. 以上の結果について, 特に筋電図学的な立場から考察を行なった.
- 社団法人日本獣医学会の論文
- 1963-12-25
著者
-
菅野 茂
東京大学農学部比較病態生理学教室
-
菅野 茂
東京大学農学部畜産獣医学科家畜環境生理学教室
-
茨木 弟介
中外製薬綜合研究所
-
稲田 七郎
東京大学農学部家畜労役生理学教室
-
茨木 弟介
東京大学農学部家畜労役生理学教室
-
菅野 茂
東京大学農学部
-
稲田 七郎
鹿児島大学農学部家畜生理学教室
-
茨木 弟介
東京大学農学部
関連論文
- 総合討論
- 125 農薬中毒に関する実験的研究 : V.家兎の心電図におよぼす農薬投与の影響
- 喉頭部の感覚受容と呼吸循環反射
- 実験的鼻閉塞における上気道筋の反射活動に関する研究
- サラブレッド仔馬および母馬の鼻捻子保定による心拍数の変化
- ラットにおける2峰性T波の成因について
- 母胎環境の変化が胎仔心拍数におよぼす影響
- サラブレット, ポニーおよび乳牛の胎仔ならびに新生仔心拍数の加齢にともなう変化
- 異常高温暴露が週齢を異にするラットの生理反応に及ぼす影響
- ラットの非観血的血圧測定法の改良
- 動物における非観血的血圧測定法
- 113 低酸素症の血行動態 (臨床分科会)(第74回日本獣医学会)
- 62 マウスの生理・生態に及ぼす環境温度の影響 : IV. 高温下および把握保定時の不整脈 (第60回日本獣医学会記事)
- 胸部大動脈の一時的閉塞によって発現する骨格筋の hypertonus に関する筋電図学的研究 : I. 放電叢及び単一放電の性状, 特に double spike potential について
- 34 実験用小動物の生理に関する研究 : VII. マウスの正常心電図
- 10 家畜の心電図に関する基礎的研究 : III. 同時記録による興奮伝導様式の決定(犬)
- 74 実験用小動物の生理に関する研究 : VI. マウスの生理諸元に及ぼす実験環境温度の影響
- 34 家畜の心電図に関する基礎的研究 : II. 心腔内誘導と心表面誘導について(犬)
- 33 家畜の心電図に関する基礎的研究 : I. 体表面の波形分布について(犬)
- 脱神経筋に関する筋電図学的研究(犬)
- 120 いわゆる心障害の発現機構に関する実験的研究 : I. ヂギタリスの投与による心障害の発現
- 79 実験用小動物の生理に関する研究 : IV. マウスの生理諸元に対する実験環境の影響
- 35 実験用小動物の生理に関する研究 : II. マウスの心拍、血圧、呼吸、体温の同時的観測について
- ニジマスの心電図とその無線搬送
- 総合討論
- イヌにおける挙手動作の調教に関する筋電図学的研究
- 常温ならびに高温環境条件下における飼料へのフィターゼ添加がブロイラーの飼育成績とミネラルの利用性に及ぼす影響
- 118 歩行運動における筋の働き方
- 繁殖季節におけるヒツジの試情時に見られる性行動と発情周期との関係
- 発情期および非発情期の雌ヒツジ尿のニオイに対する雄ヒツジの生理・行動反応
- 先天的に気道の感受性が異なったモルモットの血圧値
- ラット尾部血流量に対する交感神経切除の影響
- 気道感受性の異なる2系統のモルモットにおけるブラジキニン誘発気道収縮反応に関する研究(短報)
- 心房細動を有するウマの心拍変動スペクトル解析 (短報)
- 正常犬における膝蓋腱反射のT波の基準値(内科学)
- ブタの心臓血管系反応に及ぼす高脂質血症の影響
- DBA/2およびBALB/cマウスにおける心臓病変と心電図学的変化
- DBA/2NCrjおよびBALB/cAnNCrjマウスの石灰沈着病変の分布と出現頻度
- 競走馬における心拍変動解析による自律神経機能の評価に関する研究
- シバヤギにおける上喉頭神経の求心性活動ならびに喉頭内圧変化に対する呼吸反射に関する研究
- ラットおよびモルモットにおける上喉頭神経の線維構成(短報)
- 高脂血症がブタの右心房ペーシング負荷に対する心血管系反応に及ぼす影響
- ラットにおける喉頭腔への化学的侵害刺激による呼吸循環反射とその発現機序
- ビーグル犬心電図におけるT波とQT間隔
- 麻酔ウサギにおける上気道の水応答性呼吸循環反射
- イヌ心電図におけるT波とQT間隔
- アミオダロンとプロカインアミドのラット血圧および心電図におよぼす影響
- 鼻腔への水刺激による呼吸循環反射に関する研究
- 筑波情動系ラットの自律神経機能に関する研究
- 脳心筋炎ウイルス感染マウスにおける水迷路学習の阻害
- モルモットの実験的気道収縮時における迷走神経求心性活動と呼吸反射
- ラット心臓の興奮伝播様式に関する検討
- 犬の伏在神経刺激による硬膜上腔誘導誘発脊髄電位
- 成犬における尺骨神経および座骨神経の運動神経伝導速度と骨間筋のM波の特徴について(短報)
- イヌにおける大腿四頭筋M波の神経除去による早期変化について (短報)
- 神経性筋萎縮症モデル(イヌ) (神経疾患の動物モデル)
- ポインター種にみられた遺伝性進行性神経原性筋萎縮症の臨床的研究
- 機関誌"Experimental Animals"の発展を期待して
- 胸部大動脈の一時的閉塞によって発現する骨格筋の hypertonus に関する筋電図学的研究 : II. 放電間隔の統計的分析
- 骨格筋の機能に関する筋電図学的研究 : II. 斜面に於ける犬の前傾姿勢について
- ラットの二峰性T波に関する心電図学的研究
- ラットおよびブタの成長に伴う固有心拍数および自律神経緊張度の変化
- ドアフィーダでの乳牛の採食行動とその安定化について
- ドアフィーダーシステム方式採食場での乳牛の敵対行動とその緩和策について
- 高地環境暴露に伴う自律神経活動レベルの推移〔英文〕
- 高地環境暴露ラットの交感および副交感神経作働薬投与に対する心拍数および血圧反応(英文)
- 体性自律神経反応から見た牛の自律神経機能に対する高地環境の影響〔英文〕
- 視性姿勢調節に関する筋電図学的研究
- 育成期および成熟期にある家畜の安静時心拍数と固有心拍数および自律神経緊張度の関係
- サラブレッド胎仔の胎齢の進行にともなう心拍数の変化
- 若齢期ブタに対する高脂肪食給与の影響
- 育成期にあるブタの心血管系機能の推移
- 成長に伴うビーグル犬のnon-REM睡眠脳波の変化
- 緬羊の行動変化と心拍変動について
- 92 硬膜外麻酔に関する実験的研究 : III. 副作用の検討 (第62回日本獣医学会記事)
- 91 硬膜外麻酔に関する実験的研究 : II. 多シナプス反射の消長 (第62回日本獣医学会記事)
- 姿勢調整に関する筋電図学的研究 : II. 駐立姿勢の維持と視性平衡
- 高地環境暴露に伴う自律神経活動レベルの推移
- 高地環境暴露ラットの交感および副交感神経作働薬投与に対する心拍数および血圧反応
- 体性自律神経反応から見た牛の自律神経機能に対する高地環境の影響
- 139 骨格筋の疲労に関する筋電図学的研究 : III. 薬物投与による筋活動の変化
- 低酸素環境が成長期ラットの心肺機能に及ぼす影響
- 低圧環境におけるラットの心肺機能
- キネジオロジイの立場からみた犬の姿勢維持と歩行運動 : V. 四肢主働関節の機構
- 骨格筋の機能に関する筋電図学的研究 : IV. 骨格筋に対する訓練效果について(2)
- 骨格筋の機能に関する筋電図学的研究 : III. 骨格筋に対する訓練效果について(1)
- 121 いわゆる心障害の発現機構に関する実験的研究 : II. 運動中の心活動に対するジキタリス投与の効果
- 17 運動中の心臓機能研究におけるRadiotelemeterの応用
- 家畜の従属筋クロナキシーに関する研究 : I 従属筋クロナキシー正常値の測定方法に関する吟味,及び正常値の決定について
- 育成牛の自律神経機能に対する山地放牧の影響
- 高海抜山岳地帯繋養乳牛の循環機能に関する調査成績
- 代表的な抗不整脈薬の成熟ラット心電図に対する作用