キネジオロジイの立場からみた犬の姿勢維持と歩行運動 : V. 四肢主働関節の機構
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概要
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犬の肩関節,肘関節,股関節,膝関節および足関節など視察と計測に耐える5種類の,比較的運動範囲の広い関節を選択し,5体左右側合計50個の関節につき,機構学的な立場からそれぞれの運動の特徴を明らかにした.1) 肩関節は球関節で,運動は屈伸,内外転,旋回のいずれもが可能である.犬では胸壁上に附着するので,内,外転運動が著しく制限される.屈伸運動範囲は最大70°にとどまる.関節の伸展によつて前外方に転位し,屈伸によつて後内方に移動し,半開きの扇形に運動範囲が展開する.拘束の強い球関節である.2) 肘関節は100〜135°の運動範囲をもつ螺旋関節で,屈曲により内転が加わり,伸展によつて外転が加わる.螺旋関節の成立する原因は上腕筋の起源と附着が180°上腕骨を廻つて位置していることによる.3) 腿関節は肩関節よりも遙かに運動範囲が広く,屈,伸運動は80〜120°の範囲をもつ.伸展によつて内,外転運動の範囲が拡大し,中間位では70°以上の範囲を自由に動きうるが,最大伸展位では靱帯と関節唇の拘束によつて矢状面の中に入つて固定される.他の四足獣に比べて,股関節の結合がゆるく,大腿骨頭が球体であることが運動の自由度を拡大しているようである.運動範囲が狭いという印象をうけるEnarthrosisという名称は適当でない.4) 膝関節:関節面の一致しない関節であるが,関節面間に介入する関節盤により2つの蝶番関節の集合となる.運動は全く蝶番関節としての性質を有し,内転および外転は極端に少なく,運動軸はほぼ固定している.運動範囲は広くて120〜140°である.5) 足関節:距骨と脛骨の間の関節がこの関節の運動の主部であるが,多くの小骨の集りによつて作られる複関節である。関節面同志の密着によつて運動は屈伸運動のみに制限される.典型的な蝶番関節で,運動範囲は100〜130°である.
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