＜原著＞聴覚障害児の統語的なプライミング効果　：　格助詞「を」「が」について

概要

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本研究では､聴覚障害児を対象として､単語の認知における格助詞による統語的なプライミング効果について検討した｡刺激の要因として､格助詞の整合性､先行刺激の呈示における時間差(Stimulus Onset Asynchrony; SOA)､格助詞の種類の3要因を取り上げ､その特性をみた｡その結果､聴覚障害群､健聴群ともに小学校の高学年という段階において､健聴の成人が示している格助詞による統語的なプライミングの抑制的な効果とほぼ同様の効果を獲得していた｡しかし､両群ともに語彙項目のアクセス前の処理を検討するため設定したSOA400msの条件において､抑制的なプライミング効果がみられ､健聴の成人とは異なった性質を示した｡また､格助詞の種類｢が格｣｢を格｣における処理の差異はみられなかった｡以上の結果から､言語刺激の入力が制限されている聴覚障害児においても､健聴児･者とほぼ同様な言語処理を獲得し得ることが明らかとなった｡
筑波大学心身障害学系の論文