人工草地の自然下種に関する生態学的研究 : I.寒冷地域のオーチャードグラス放牧地における自然下種の実態および放牧地の植生変化からみた自然下種の位置づけ
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概要
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慣行的利用条件下での自然下種による植生回復の実態およびその位置づけ,すなわち自然下種による植生回復はどんな条件下で必要かつ可能になるかを検討するため,帯広市八千代公共育成牧場でオーチャードグラスが優占する造成後3〜9年の放牧地を対象に,植生推移および自然下種から発生した幼植物個体数の推移を調査した。主要な結果は以下のとおりである。1)オーチャードグラスの積算優占度の経年的低下および雑草の増加に伴って,オーチャードグラスの株直径が大きくなり,「株化」が草地の植生変化に関連することが示唆された。2)草地における埋土種子量は1,000〜3,000粒/m^2に達し,牧草密度の低下に伴う雑草侵入の必然性を示した。高い草地生産力およびその連続性を維持する意味で,自然下種による植生回復の必要性が提起される。3)自然下種により発生したオーチャードグラス幼植物個体数は軽放牧区が対照牧区より多く,m^2当り220個体にのぼる幼植物がみられ,草地の植生回復に貢献する可能性を示唆した。4)慣行的利用条件では,草地の裸地率が高い条件においても自然下種による幼植物個体数が少なく,自然下種効果を高めるためには待期放牧を導入する必要があることを示した。5)草地植生変化の傾向からみるかぎり,当牧場放牧地の自然下種適用年次は草地造成後6〜9年後が望ましいが,結論を得るためには幼植物の生長と環境の要因量との関係をなお詳しく検討する必要がある。
- 日本草地学会の論文
- 1986-10-31
著者
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丸山 純孝
帯広畜産大学畜産学部
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福永 和男
帯広畜産大学草地学研究室
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楊 中〓
東北大学農学部附属草地研究施設
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福永 和男
帯広畜産大学草地学講座
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楊 中〓
帯広畜大草地生態学研究室
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丸山 純孝
帯広畜大草地生態学研究室
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福永 和男
帯広畜大草地生態学研究室
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丸山 純孝
帯広畜産大学草地学講座
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