窒素施肥がライグラス類,チモシーおよびオーチャードグラスの収量,蛋白質,アミノ酸およびカロチン含量に及ぼす影響
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概要
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一般にイネ科草類の栽培には窒素質肥料を必要とするが,これは施用窒素の種類,施用量,施用時期,施用法,基肥と追肥および草種などによって異なる。筆者はこれらイネ科草類に及ぼす窒素施肥の影響について研究しているが,今回はイネ科草類中ライグラス類(ウエスターウオルドライ,イタリアンライ,ペレニアルライ),チモシーおよびオーチャードグラスについて窒素の施用量がその収量,蛋白質,アミノ酸組成およびカロチン含量に及ぼす影響について研究したのでその結果について摘要するとつぎのごとくである。1.1年生のウエスターウオルドライ,イタリアンライの生育は初年目に著しいことはいうまでもないが,窒素施用量の増加とともに収量も増加する。ウエスターウオルドライは窒素10kg/10a施用量で乾物生産が1トン以上となり,同20kg/10a施用量が最高を示す。イタリアンライはウエスターウオルドライに比し同一施用窒素量に対しやや乾物生産量が低減する。ペレニアルライはこれにつぎ,オーチャードグラスおよびチモシーは1回刈のみであるのでこれら両種に比し少なくなる。2.2年目以降では基肥と同量の窒素を追肥として各刈取毎に分施したが,追肥施用の効果は著しく,しかも年次が進むとともにその反応が大きい。3ヵ年間の追肥試験では,基肥の無窒素区における草齢2年目の追肥による増収効果は50%程度であるが,窒素施用区(基肥)のそれは57〜114%までに増大する。窒素追肥の効果は年次,草種によって異なる。年次との関係では追肥初年目(草齢2年目)は3%内外であるが,追肥2年目以降は2倍以上の増収を示す。3ヵ年間の乾物生産量ではオーチャードグラスがもっとも大であり,チモシーおよびライグラスがこれについでいる。3.窒素施用の影響は蛋白質,アミノ酸およびカロチン含量にも認められる。すなわち,窒素施用量の増加とともに草類中に含まれる蛋白質含量も多くなり,したがってその蛋白質生産量も増大する、乾物中蛋白質の含量は無窒素区では9%内外であるが,窒素施用量が増すにしたがって増大し,14%以上にも達する。窒素施用は収量の増加もきたすので,10a当り蛋白質生産量は無窒素区に比し4〜7倍となる。アミノ酸組成においても同様であり,窒素施用量の増加とともに各アミノ酸ともそれぞれ増加する。分析したウエスターウオルドライとペレニアルライにおいて比較的含量の多いアミノ酸はグルタミン酸,アスパラギン酸,ロイシン,アラニンおよびリジンなどである。カロチン含量も窒素施肥の増加とともに増し,窒素含量と平行している。4.窒素施用と吸収との関係については,1年生のウエスターウオルドライとイタリァンライについてその出納をみると,窒素10kg/10a施用区でも同20kg/10a施用区でも1番刈の時に60〜70%,2番刈の時に50〜60%計120%以上の窒素の吸収率を示す。つまり施用した以上に吸収しているが,これは土壌窒素などからも吸収したものであり乾物1t/10a以上の生産をあげる場合には10a当り4kg程度の窒素増施が必要と思われる。以上のごとく,今回の圃場試験においてもイネ科草類に対する窒素施用の効果は著しく,草種,施用量に対して反応差は認められる。総体的には窒素10kg/10aの施用はイネ科草類の収量を増すのみでなく,質的向上つまり蛋白質,アミノ酸およびカロチンの生産にも寄与するところが大である。
- 帯広畜産大学の論文
- 1967-12-31
著者
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