食の安全性情報と消費者行動に関する基礎的研究(プロジェクト研究展望)
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
アメリカ産牛肉の輸入再開や鳥インフルエンザの流行などによって,国民の関心が再び高まっている「食の安全性」であるが,こうした社会的不安の背景として,最近のライフスタイルの変化や食品産業の巨大化に伴う情報の偏在を指摘できる.しかし,その最も根本的な原因としては,行政を含めたフードシステム関係者が,消費者に対し,食品を「安心」して買える環境を未だに提供できていないことをあげておかねばならない.わが国においても,HACCP等の普及により,「安全性」の確保については整備が進んでいるといって良いであろう.しかしながら,消費者にとっての安全性とは,実際には安心度と等しいものである.従って,業界関係者にとって最も重要な課題は,どのような情報をどうやって消費者に伝えることが彼らの信頼を得ることにつながるのかについて検討することであろう.本研究では,こうした問題意識のもと,消費者を安心させるためのシステム構築に資することを最終目的とし,2005年度から実施している調査研究の計画内容と成果について報告を行なった.本調査は,具体的には,国内外におけるトレーサビリティおよび食品のラベル表示についての現状と規制の動向を把握するための現地調査,および消費者に対する意識調査から構成されている.初年度に行った調査は,アメリカ東部での現地調査と,わが国の首都圏の主婦に対する郵送アンケート調査である.その結果,現地調査においては,(1)アメリカでも畜産物のトレーサビリティの導入が検討されてはいるものの,コストの問題などにより法制化が十分に進んでいないこと,(2)オーガニック食品の市場が急成長しているが,競争の激化により価格プレミアムが縮小していること,(3)様々な地域問題を解決する手段として,州政府が積極的にローカルフードのブランド化を推し進めていることなどが分かった.また,意識調査に関しては,牛肉,野菜,地元産農産物という対象財の違いによって3種類の調査票を作成し,1万件に配布した.現在回収中であるため,結果については紹介できなかったが,得られたデータを多角的に分析することによって,(1)食品を購入する際に,どのような情報を消費者は重視しているのか,(2)BSEに関連して,人へのリスクやアメリカ産牛肉の輸入再開についてどのように考えているのか,(3)地場産というブランドをどのように評価しているのか,などについて明らかになる予定である.また,研究2年目に当たる2006年度以降は,中国やEUなどでの現地調査,およびアメリカにおける電話による意識調査を実施し,国際間比較を行うことを計画している.
- 千葉大学の論文
- 2006-03-31
著者
-
栗原 伸一
千葉大学大学院園芸学研究科
-
霜浦 森平
千葉大学大学院園芸学研究科
-
栗原 伸一
千葉大学園芸学部
-
丸山 敦史
千葉大学園芸学部
-
霜浦 森平
千葉大学園芸学部
-
西山 未真
千葉大学園芸学部
-
Luloff A.
ペンシルバニア州立大学
-
廣瀬 牧人
沖縄国際大学
-
松田 友義
千葉大学大学院自然科学研究科
-
丸山 敦史
千葉大学大学院園芸学研究科
-
松田 友義
千葉大学大学院
関連論文
- 共食の機能と可能性-食育をより有効なものとするための一考察-
- International Difference in Consumers' Food Safety Concern:Comparison between Japan, the United States, China, and Ireland
- アイルランドにおける食品安全政策と消費者意識
- 牛肉消費に及ぼす情報効果の計測-BSEに関する新聞報道から-
- 農村女性による起業活動の展開と個別経営発展に関する一考察 : うつのみやアグリランドシティショップを事例として
- 生乳生産における品質管理の現状とその意義 : 酪農全国基礎調査(現地調査)からの接近
- 生ゴミ分別に対する住民意識と要因分析 : 栃木県茂木町を対象として
- 沖縄県産亜熱帯果実の販売戦略としての電子商取引の活用要件に関する研究
- モンスーン・アジア灌漑農業の発展段階 : フィリピンの事例
- コミュニティ評価の要因分析 : ―千葉県における都市・農村比較―
- 食品安全性に対する若年消費者意識の日米比較
- 食の安全性情報と消費者行動に関する基礎的研究(プロジェクト研究展望)
- ネットワーク型競り実験による安全な食品に対する支払意志額の計測--サルモネラ・フリー鶏卵のケース
- 食品安全性に関する競り実験 : サルモネラフリー卵への支払意志額の推計
- 認定農業者のための効率的支援活動プログラムの策定 : コンジョイント分析による選好把握とその適応
- 冷凍食品業界におけるHACCP手法を用いた衛生管理・品質管理の現状と課題 (HACCP手法による食品の衛生管理・品質管理の取組みの現状と課題) -- (第2章 HACCP手法による食品の衛生管理・品質管理の取組みの現状と課題)
- 米国における大気及び水質汚染 : 主要汚染物質に関する州別データを用いた分析
- ごみ処理サービスの需要分析 : 千乗県を事例として
- フィリピンの稲作およびコーン作の効率性構造 : イザベラ州の事例
- フィリピンの稲作およびコーン作の効率性構造--イザベラ州の事例
- 収穫後技術の経済的評価 : フィリピンにおける米とトウモロコシ乾燥の事例
- 小学校における農業体験学習の効果 : 東京都練馬区を事例として
- 都市公園に対する選好と経済価値 : 横浜市三ッ池公園を事例として
- 都市住環境アメニティの経済学的評価 : 大阪府北摂地域の場合
- 食品安全性とリスク学習過程 : 卵のサルモネラ汚染を事例とするWTP関数の推計
- 中国東北部における農村都市労働移動の実態
- Adaptive LearningモデルによるWTP関数の推計 : 卵のサルモネラ汚染
- 食品安全性に対する消費者受容態度 : 意識調査による分析
- フィリピン・コーン農家の技術的効率性 : フロンティア費用関数による接近
- 北部フィリピンのトウモロコシ作の実態 : イザベラ州における農家調査による
- 農家の経済活動多角化と農村の社会関係資本 : 千葉県安房地域における農家調査の分析
- 農村経済の多角化と地域生活集団 : 構造的社会関係資本への着目
- 畜産に関するガット農業合意が国内経済へ及ぼす波及効果の応用一般均衡分析
- 地域資源がコミュニティ評価に与える影響の構造分析 : ペンシルバニア州ベッドフォード郡における調査から
- 落葉果樹産地における技術革新と経営分化 : 長野県中野市H地区を事例として
- 農業生産法人による地域管理と経営戦略 : 石川県珠洲市の中山間地域を対象として
- ポジティブリスト制度がわが国農業に与えた影響 : 決定木を用いた対応農家の属性分析と意識による分類
- 環境保護に関する意識と行動の構造分析 : 米国エバーグレーズ国立公園に対する住民アンケートを通して
- 農業研修生の教育プログラムと主体形成 : 北海道新得町レディースファームスクールを事例に
- グリーン・ツーリズムに対するニーズ分析
- 観察調査による食の安全性意識と購買行動分析
- 鶏肉の購買行動と要因分析 : 鳥インフルエンザの影響を受けた消費者の特性分析
- 家族経営協定の評価に関する構成員間比較 : 埼玉県における締結農家を対象に
- 洋らん鉢物経営におけるリレー生産方式の経営的意義
- 鹿沼市農業公社の経営展開に関する一考察
- ファーストフードにおける消費者行動の定量分析 : ハンバーガーショップを事例として
- 公共投資に関する消費内生化地域間産業連関モデルによる波及効果の分析
- 園芸活動が持つ心理的効果のグラフィカル因果分析-松戸市近郊住民に対する意識調査を通して-
- 連立方程式体系による世界食糧需給モデルの構築 : コメ・麦・トウモロコシ・牛肉・豚肉需給モデル
- 土地改良区経費の主体別負担率に関する研究
- 「中食」消費行動の要因分析 : 大学生を対象としたアンケート調査から
- 地域環境NPOの参加者の居住歴と活動の志向性--滋賀県守山市のNPO法人「びわこ豊穣の郷」を事例として
- 戦前期米穀関税と国内米価 : Grangerテストによる因果性の検討
- 社会保障と地方財政に関する住民意識 : 千葉県における都市農村比較
- 都市農村交流による農村の内発的発展に関する一考察
- 社会保障の経済波及効果に関する産業連関分析 : 公共事業費の削減による基礎年金財源の確保に着目して
- 社会保障と公共事業による就業誘発効果 : 産業連関分析による検討
- 財政構造に関する住民意識の都市農村比較
- 社会保障と公共事業による就業誘発効果の計測 : 都市部と地方部の比較分析
- 都市農村交流による経済効果に関する産業連関分析 : 兵庫県八千代町を事例として
- 農地が持つ防災機能の経済評価--東葛飾地域を対象にして
- 市町村産業連関表作成のための実態調査手法に関する一考察 : 農業・食料・観光関連産業の部門別取引額の推定方法に着目して
- 環境ボランティア活動の多様性と参加の規定要因 : 参加意欲と参加経験のギャップをめぐって
- 地域社会における水環境保全の「担いのしくみ」--滋賀県守山市を事例として
- 地球環境ボランティア組織における自立と連帯
- 社会科学編 地域環境ボランティア活動への参加と生活経験
- 内発的発展に関する産業連関分析 : 京都府美山町における地域経営型都市農村交流産業を事例として
- フィリピン・コーン農家の技術的効率性 : フロンティア生産関数による接近
- 大都市地域における定年帰農希望者の就農意思決定構造 : グラフィカル因果分析を用いた地域間比較
- 浅野耕太 著 『農林業と環境評価 : 外部経済効果の理論と計測手法』
- 商品先物取引の受容態度に関する研究 : タマネギ生産者に対する意識調査を通して
- グリーン・ツーリズム施設による地域経済への波及効果 : 長野県飯山市における地域産業連関分析
- 千葉市住宅地域における環境要因の評価 : メッシュ・データを用いたヘドニック法による
- 農産物産直のIT化に関する研究 : ホームページを利用した生産者への意識調査
- インターネットを利用した農産物産直の効果と経営者意識
- スポーツ・ハンティングを利用した野生鳥獣管理に関する研究 : ペンシルバニア州におけるディア・ハンターに対するアンケート調査から
- 県産農産物・農産加工品の輸移出収入に関する波及効果分析
- 沖縄における観光資源の評価情報に関する数量化分析
- 沖縄県の都市化に関する数量的分析
- 食品安全性に対する若年消費者意識の日米比較
- 沖縄県内の市町村民所得の格差に関する数量的考察
- 緑化用苗木のトレーサビリティ(「地域種苗の可能性」)
- 地元産農産物に対する消費者選好の因果構造 : 地域や農との関わりに注目したグラフィカル因果分析
- 直接支払制度における集落協定の締結要因
- 棚田保全関係者の意識と行動 : 石川県白米千枚田を対象として
- 観光収入の県農業に及ぼす波及効果に関わる産業連関分析
- 逐次回帰を用いた構造変化の時期の特定手法に関する考察 : 農作物共済に関わる掛金国庫負担比率の推移を事例として
- 地域環境NPOの活動の包括性とジレンマ : 滋賀県守山市のNPO法人「びわこ豊穣の郷」を事例として
- トレーサビリティについての動向と課題
- トレーサビリティで得られる安心・安全--HACCPとの併用で安全性担保が可能に
- インターネットによる農産物販売 (2000年版 農産物流通技術年報) -- (農産物流通技術上の問題点と対策)
- 農地が持つ防災機能の経済評価 : 東葛飾地域を対象にして
- ネットワーク型競り実験による安全な食品に対する支払意志額の計測 : サルモネラ・フリー鶏卵のケース
- 共分散構造分析による集落機能の評価
- 東アジア・東南アジアにおけるバイオエタノール原料としてのサトウキビ生産 : 中国とフィリピンにおける小規模サトウキビ農家の生産構造
- 東アジア・東南アジアにおけるバイオエタノール原料としてのサトウキビ生産 : 中国とフィリピンにおける小規模サトウキビ農家の生産構造
- EUREPGAP認証黄色リンゴのEU輸出拡大戦略-Messe Berlin FRUIT LOGISTICA 2007におけるアンケート調査から-
- 地域環境NPO の会員の年齢層と参加の様態 : 滋賀県守山市のNPO法人「びわこ豊穣の郷」を事例として
- 消費者の食品不安に関する国別差異--日本・米国・中国・アイルランドの比較
- マンゴー加工品の顧客満足度と購買選択行動 : 沖縄, 宮崎, インド・タイ産マンゴーゼリーの食味官能試験からの接近