共食の機能と可能性-食育をより有効なものとするための一考察-
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概要
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食品の安全不信など食料の質の問題が表面化する中,個食(孤食),欠食等食生活をめぐる問題も深刻化し,食や食育への関心は社会的に高まっている.地方自治体やNPO等様々な主体により積極的に食育が実施されているものの,その効果は実際の食生活に変化を与えるほどには至っていないのが実情である.そこには「食のもつコミュニケーション機能への配慮の欠如」と「食育の対象者の限定」という課題が存在すると考えられる.本論文では,食の本質的な機能といえる「共食」に注目し,共食を『食事を通して人と人がつながり,他者と共感する機会』と定義し,その機能を明らかにすることで,食育をより有効なものとする糸口を探求したい. まず,アンケート調査により,若い世代を中心とした,個食や欠食等食の乱れの実態と,食事の際にコミュニケーションの欲求が存在していることを明らかにした.さらに,共食の慣習のある事例等への聞き取り調査により,集団であることのメリットとして①伝統行事や文化の継承②定期的な開催③所属意識の高まり④コミュニケーションを可能とする場の創出があり,食事を共にするメリットとして①会話が進む②集団内の人間関係の構築③相手への理解が進む④新たな料理・食材・調理法との出会い⑤調理法の伝達が可能⑥地域や各家庭の味を堪能できることが明らかとなった.この結果を踏まえ,共食の機能を①コミュニケーション機能②教育機能③文化継承機能④社会適応機能⑤娯楽機能の5点とした.共食することにより心の充足を感じるとともに,共食の多面的な機能により食育を食習慣の改善に役立てられると考えられた.Policy makers and some kinds of NPOs have been interested in Food Education (“Shokuiku") from variouspoints of view, in particular keeping good traditional dietary habits. However, most their food education programs are not comprehensive, but inclined to nutrition guidance. We aresorry they underestimate the social and cultural side of Food Education. Therefore we noticed that a function ofeating together (“Kyoshoku"). Kyoshoku is one of the most important dietary habits in Japan. It includes therelationship of family or community members, and sometimes is main content of the traditional event. They feelsympathy with other members and identify themselves as the member of the group. We mentioned the possibility of food education programs to improve eating habits by putting Kyoshoku in theprograms. According to the result of this research, we realized that the eating habits of younger generation have beenchanged drastically. Many young people tend to eat alone. On the other hand, most of them need to have a chanceto eat together. From the analysis of the interview survey to younger generation, we pointed out fi ve functions ofeating together. And we believe that eating together gives us the satisfactions after communication with otherpeople and improvement of eating habit.
- 2010-03-31
著者
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