鹿児島県下の放牧肉用雌牛における繁殖成績と栄養状態の季節変動に関する調査

概要

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放牧肉用牛繁殖雌牛について, 繁殖成績やその季節的変動および1年間の栄養状態を調査し, 繁殖状況と栄養状態の関連性について追求した.繁殖成績は鹿児島県下の代表的肉用牛繁殖育成センター4箇所の記録から計301頭の牛について調査集計した.栄養状態の推移についてはこれらの調査牧場と飼育形態の類似している鹿大入来牧場において, 放牧飼育中の繁殖供用牛23頭について, 毎月の状態を検査した.その結果は次のとおりである.1.肉用繁殖育成センターにおける初産時の受胎率は4牧場の平均で85.4%と較的高く良好な成績であったが, 2産次25.9%と著しく低下し, 分娩後の発情再帰が標準より大きく遅れており, 分娩後の期間が経過しているにもかかわらず授精回数が少なかった.2.授精頭数と受胎頭数の月別変動をみると, 両者ともほぼ一致した傾向を示し, 5月から7月にかけて多くなり8月に低下し, 秋にかなり回復して, 冬季に減少している.3.一方, 家畜の栄養状態は冬季に最も悪く, 晩春からやや回復し, 6月で正常になり, 8月にはやや低下するものの10月頃まで良好な状態を続け, 11月から低下の傾向をたどった.しかし, 個々の測定項目ごとにみると, 血色素量は9月, 10月に年間で特に低く, ダニなどの影響もその一因と推定される.4.体重は1月, 2月と低く, 3月で年間最低値を示し, 以後徐々に増体し, 6月で年間の平均値を示し, その後さらに増体して10月で最高となり以後減少した.10月の体重増加を規準化により年間の平均値に対する標準偏差の割合でみると+1.01の増加であるのに対して3月は-1.65と年間の標準偏差よりさらに著しい体重の減少を示した.5.さらに体重の推移について, 調査期間中に妊娠したものと妊娠していないものにわけて検討した.その結果両者共全く同様な月別変動を示し, 舎飼牛に見られるような妊娠後期の増体は, 一般的に体重の減少する季節では認められなかった.しかし, 妊娠後期が冬季にかかって著しい体重の減少を示した個体でも子牛だけはいずれも無事出産している.このようなことから周年放牧による妊娠牛の負担は非常に大きなものがあり, 調査牧場における2産次の低受胎率や発情再帰の遅延もこれと深い関係があるものと考えられる.6.受胎頭数と栄養状態の関連でみると6月が最良の栄養状態にあるとは考えられないが, 年間で最も多い受胎頭数を示している.これは冬季の低栄養によって抑えられていた生殖活動が, 養分摂取量の増加と共に栄養状態が正常に戻ると同時に急速に回復した結果, 5月頃から7月頃に良好な受胎成績を示したものと考えられる.
1974-03-20

鹿児島県下の放牧肉用雌牛における繁殖成績と栄養状態の季節変動に関する調査

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