家鶏の性成熟における環境支配に関する研究 : 4.性成熟に対する甲状腺機能の関与
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概要
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環境温度の性成熟支配に対する下垂体-甲状腺系の関与について, 単冠白色レグホン種雄鶏を用い, 以下のような実験を行ない, その機構を追究した.1)性成熟に伴う甲状腺機能の正常変動傾向を検討するため, 85,100,115および130日令の各時期にI^<131>を用いてrelease rateおよびuptake%を経時的に測定し, 同時に精巣発育状態との関連を追究した.2)甲状腺機能変動の性成熟に対する関与を検討するため, 性成熟直前の供試鶏を用い2回のhypothyroidism誘起実験を行なつた.すなわち第1回実験では, 90日令の供試鶏に5週間, 第2回実験では, 70日令の供試鶏に50日間, 0.2%の抗甲状腺剤を給与して, hypothyroidismを誘起し, 甲状腺, 精巣, 下垂体前葉, 各種内分泌腺および臓器重量の変動状態ならびに下垂体前葉性腺刺激ホルモン力価の測定をした.3)性成熟に及ぼす甲状腺機能促進の効果を検討するため, 70日令および90日令の供試鶏について, 前後2回の実験を行なつた.すなわち, 第1回実験では, 50日間0.025%のIodocaseinの投与により, 第2回実験では, I-thyroxineの50日間連続注射により, hyperthyroidismを誘起し, その影響を前回と同様な方法で追究した.なお, thyroxine注射実験では, 供試鶏を30γ, 60γ, 90γ注射区および対照区の4群に分けた.以上の実験の結果は, つぎのとおりである.(1)Release rateおよびuptakeの経時的測定結果から, 甲状腺機能は成長に伴い減少の傾向が認められた.とくに, 性成熟直前の115日令ごろまでに, この傾向が著しく, それ以後においては, やや抑制的な機能状態に移行するように推察された.これを精巣発達程度により検討すれば, この傾向は, 一層顕著である.(2)抗甲状腺剤投与による誘起hypothyroidismでは, 両実験を通じ, 精巣増量は有意に促進され, かつ, 精管内精液の状態からも, 性成熟の促進が確認された.また, 下垂体前葉性腺刺激ホルモン力価も対照鶏に比較して有意に高い値を示しており, 精巣発育促進は, 下垂体を経由するものであることが推定された.(3)Iodocasein投与ならびに1-thyroxine注射によるhyperthyroidismでは, 対照鶏に比較して, 性成熟は一般的に遅延される傾向が認められたが, 統計的に有意な差異は, 最多量投与の場合のみであつた.これら一連の実験成績からhypothyroidismは, 下垂体前葉に作用して, 性腺刺激ホルモンの産生分泌を増加し, 性成熟を促進せしめ, 逆にhyperthyroidismは, これを抑制する傾向があるものと推察される.したがつて, 環境温度の性成熟支配には, 下垂体-甲状腺系の関与も, その一因をなしているものと考えられる.
- 鹿児島大学の論文
- 1962-03-25
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