冷凍貯蔵により可能になったブナ堅果の3年貯蔵
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概要
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日林誌84:267〜270,2002 ブナの堅果を安定的に確保するために長期貯蔵試験を実施している。本報では,前処理と貯蔵温度を変えて貯蔵した3年間の結果を報告する。前処理として堅果の乾燥状態を4段階に制御した(無処理;平均含水率30%,弱乾燥処理;11.3%,中乾燥処理;6.1%,強乾燥処理;4.0%)。前処理を施した堅果は2℃(冷蔵貯蔵)と-20℃(冷凍貯蔵)で貯蔵した。無処理の堅果は1年以上貯蔵した後では,貯蔵温度に関わらずほとんど発芽しなかった。冷蔵貯蔵では,弱乾燥処理で貯蔵1年で発芽能力を失ったが,中乾燥処理と強乾燥処理では貯蔵2年まで発芽した。ただし,3年目にはほぼ完全に発芽能力を失った。これに対して,冷凍貯蔵では,無処理以外の堅果は乾燥程度に関わらず貯蔵3年目でも50%以上の発芽率を示した。3年間貯蔵した堅果から発芽した実生の80%以上が本葉展開まで至り,形態的な異常もみられなかった。これらの結果から,ブナ堅果の長期貯蔵には,乾燥処理を施して-20℃で貯蔵する冷凍貯蔵が有効であると推察された。ただし,さらに長期間を貯蔵するための最適含水率を特定するには引き続き観察が必要である。
- 日本森林学会の論文
- 2002-11-16
著者
-
小山 浩正
山形大学農学部
-
長坂 有
北海道立林業試験場
-
今 博計
北海道立林業試験場
-
八坂 通泰
北海道立林業試験場
-
寺澤 和彦
北海道立林業試験場
-
寺澤 和彦
北海道林試
-
小山 浩正
北海道立林業試験場道南支場
-
八坂 通泰
北海道立林業試験
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