ブナ林内におけるブナ稚樹の空間分布と他樹種の樹冠との関係
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
1.ブナの稚樹の空間分布と林冠木の状態との対応を調べるために,北海道南西部のブナ天然林において設定した1haの方形区を5m×5mのグリッドに400分割し,各グリッドに出現したブナの稚樹を数えた.グリッドは上部の林冠の状態により,「ギャップ下」,「ブナ樹冠下」および「ブナ以外の樹冠下」の3タイプに区分した.2.方形区内に存在した稚樹は,高さが10-50cmの稚樹で686本,50-100cmの稚樹で683本であったが,どちらもブナ以外の樹冠下に集中していた.3.林冠木は,4月17日にはどの樹種も未開葉であったが,5月23日にはブナのみが展葉を完了し,他の樹種は開葉していなかった.7月10日にはすべての林冠木が展葉を完了していた.4.林床の相対光量子束密度(rPPFD)は,林冠層のブナのみが開葉した5月23日には,ブナ樹冠下でギャップ下に比べて大きく減少していた.しかし,開葉が始まっていないブナ以外の樹冠下ではギャップ下と大きな違いはみられなかった.5.ブナの稚樹がブナの樹冠下で少なかったのは,ブナ林冠木の展葉が他の広葉樹よりも早いため,全天条件で生育した場合に比べて成長が抑制されるためと考えられた,一方,開葉の遅いブナ以外の広葉樹の樹冠下では,ブナの林冠木が開葉を完了させた時期においても,ブナの稚樹は被陰を受けないので成長が抑制される程度が少ないと考えられた.6.ブナ以外の樹冠下では生育期間の前半に閉鎖し,以降の林床は被陰下におかれるので強光を通年で要求する先駆種は生育できない.このため,ブナの稚樹が独占的に利用できる生育立地と考えられた.
- 植生学会の論文
- 2007-12-25
著者
-
小山 浩正
山形大学農学部
-
今 博計
北海道立林業試験場
-
紀藤 典夫
北海道教育大学函館校地学教室
-
紀藤 典夫
北海道大学理学部地質学鉱物学教室
-
紀藤 典夫
北海道教育大学函館校
-
紀藤 典夫
北海道教育大・函館校
関連論文
- 山形県のブナ林における豊凶予測手法の適用と改良の可能性
- 北海道のカラマツ人工林とトドマツ人工林 (広葉樹林化プロジェクト(Vol.3)その人工林は広葉樹林化できるのか?)
- トドマツ人工林における間伐が広葉樹の天然下種更新に及ぼす影響
- 冷凍貯蔵したブナ種子の発芽率と含水率の10年間の変化
- 防風林の風倒要因の解析 : 2004年台風18号による北海道美唄市の例
- サワグルミ(Pterocarya rhoifolia)の種子サイズと風速のばらつきが散布距離に与える影響
- 道南地方におけるブナの植栽事例
- ブナの更新を目的とした播種造林試験--3年間の追跡調査より
- 小動物(ネズミ)による冬期間のブナ種子の捕食--ブナ天然更新施業地での実験より
- ブナ林再生に貢献している結実予測技術
- 豪雪地帯のブナ林における母樹からの距離に応じた当年生実生の発生数 : 種子捕食に対する積雪の保護効果の検証
- 赤川流域におけるニセアカシア(Robinia pseudoacacia L.)の分布拡大と埋土種子の役割
- 冬芽調査によりブナ林の2年後の凶作を予測する手法
- 冷凍貯蔵により可能になったブナ堅果の3年貯蔵
- 冬芽調査によるブナの結実予測手法
- かき起こしのタイミングがブナ天然更新の成否に与える影響 : 豊凶予測手法の導入の有効性
- 北海道駒ヶ岳の最初期テフラの発見と初期噴火活動史の検討
- 北海道駒ヶ岳1996年3月の噴火
- 道南地方のスギ育種種苗10年生の成績と家系別特性
- ブナ堅果の豊凶を予測する
- スギ人工林の疎密度と林内の光環境の関係--人工林の混交林誘導のための目安として
- サワグルミ(Pterocarya rhoifolia)の種子サイズ変異に花序の小花サイズとその成熟過程が与える影響
- アオダモ果実の果皮による発芽遅延とそのメカニズム
- 多雪地における積雪環境がブナ堅果の生残と稚樹の分布に与える影響 : 堅果捕食に対する積雪の保護効果の検証
- アオダモ果実の休眠・発芽に果皮と低温湿層処理が与える効果
- 自然とヒトとの共同作品としての森林の姿(北から南から,Information)
- 豪雪地に造成されたカラマツ人工林の今後の管理--山形県庄内地方における比較的高齢な林分を事例として
- 天然林施業のツールとしての生態学(天然林施業に貢献する生態学)
- ブナにおけるマスティングの適応的意義とそのメカニズム
- カラマツ伐採跡地における広葉樹の更新状況
- ブナ林内におけるブナ稚樹の空間分布と他樹種の樹冠との関係
- 林齢が異なるクロマツ海岸林に対する間伐効果
- スギ-ヒバ二段林における上木伐採方法の違いが下木の損傷率と成長量に及ぼす影響
- ブナとミズナラの堅果生産の豊凶がヒグマに与える影響 (特集 ヒグマ考--陸の王者の博物誌)
- ブナ林の施業--結実の豊凶予測 (今月のテーマ/ブナ(上) 樹種シリーズNo.13)
- ハマナスを主としたバラ属9種の相互交雑によるF1の育成と特性
- ブナの新しい更新技術(6)ネズミの持ち去りを考慮した地表処理の評価
- 1993年北海道南西沖地震による渡島半島西岸の津波被害状況と住民の避難行動 : 大成町を例として
- 548 20万分の1地質図幅「夕張岳」内のナップ(地域地質)
- 蝦夷累層群中に見出された蛇紋岩礫 : 神居古潭構造帯の蛇紋岩の迸入時期についての新資料
- 107 蝦夷累層群中に見出された蛇紋岩礫
- 上部白亜系湧別層群中のマンガンノジュール
- 対馬海流の脈動と北海道における完新世の温暖貝化石群集の変遷
- 138 北海道南西部の下部更新統富川層の貝化石群集(古生物・古生態)
- 森の芽生えの生態学, 正木隆編, 文一総合出版, 2008年3月, 258ページ, 3,360円(税込), ISBN978-4-8299-1070-2(ブックス,Information)
- 北海道中軸帯ニセウ層から産出した始新世放散虫化石とフィッション・トラック年代
- 2. 北海道中軸帯ニセウ層の地質年代
- 地学野外実習を通した自然観察力養成プログラムの研究
- 北限のブナ : その地史的背景((2)限界地めぐり)
- 洞爺湖周辺における最終氷期前期の木材化石群集と森林植生の復元
- 最終氷期末期のモミ属優占林の成立-北海道南西部における材化石および花粉化石からの復元-
- 完新世におけるブナの個体群増加と移動速度-北海道南西部の例-
- 火山災害についての教育 : 北海道駒ヶ岳付近の中学生の意識
- 220. 中生代放散虫Higumastrinaeの形態と系統
- 北海道中央部, 空知層群下部層最上部のピクライト
- 20 模式地における空知層群の層序
- 北海道の中生界 : 層序・年代とその意義(日本の中・古生界研究の発展と現状)
- 北海道神居古潭帯における緑色岩と砕屑性堆積岩の関係
- 浅間山麓の冷温帯落葉樹林におけるハルニレの更新に果たす地表攪乱の役割
- 発芽生物学 : 種子発芽の生理・生態・分子機構
- ブナの新しい更新技術(4)フェノロジカルギャップの発見
- ジベレリン処理によるヒノキアスナロの種子生産
- ジベレリンによるヒノキアスナロの着花促進
- 長期貯蔵のためのブナ堅果の含水率調整方法
- ブナの結実予測(林木育種事業・研究最近の取り組み)
- スギ人工林の疎密度と林内の光環境の関係 : 人工林の混交林誘導のための目安として
- 豪雪地に造成されたカラマツ人工林の今後の管理 : 山形県庄内地方における比較的高齢な林分を事例として
- 森林施業後の林床被覆の違いが表土流出に及ぼす影響
- クロマツ植栽苗への防風柵による寒干害の助長効果
- 現場の要請を受けての研究(19)地域住民と協働で行うブナ科堅果の豊凶調査
- 水に対する浮力実験によるニセアカシアの莢が種子の散布に与える効果の検討
- 河川域におけるニセアカシアの水平根からの根萌芽発生様式
- ブナ林の林冠層におけるヤドリギの分布パターンの特徴と鳥による種子散布の影響
- ブナ円形密度試験地における植栽密度と形質の関係(会員研究発表論文)
- 河川敷におけるニセアカシア駆除の工法別の有効性
- Evolution of Oceanic Island Arc-Geology of the Izu-Bonin island and approach from the samples and data of the ODP Leg 126-
- ブナの結実予測(IV) : 開花の同調性は気象要因で説明できるか?(会員研究発表論文)
- ジベレリン処理によるヒノキアスナロの着花促進(会員研究発表論文)
- 地表処理の違いがブナ稚樹発生に及ぼす影響 : かき起こし、刈払い地における播種試験(会員研究発表論文)
- カラマツ伐採跡地における広葉樹の更新状況(会員研究発表論文)
- 十勝南部の再造林放棄地における植生回復(会員研究発表論文)
- ブナの結実予測(II) : 2年後の凶作を予測する(会員研究発表論文)
- シーズナルギャップに対応したブナの更新について(会員研究発表論文)
- 異なる光環境下で生育しているヒノキアスナロの成長と分枝パターン(会員研究発表論文)
- 地学野外実習を通した自然観察力養成プログラムの研究
- 林齢が異なるクロマツ海岸林に対する間伐効果(会員研究発表論文)
- ブナの豊凶予測は天然更新の成功に貢献したか?(会員研究発表論文)
- ブナの結実予測(III) : 雌花序痕を使ってどこでもできる予測手法(会員研究発表論文)
- 山形県におけるブナ豊凶予測の検証