10% Nitroglycerin (NT-1 原薬) のウサギにおける経皮慢性毒性試験
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概要
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10% nitroglycerin である NT-1 原薬をウサギ背部皮膚に6箇月間連日経皮投与し, の毒性および1箇月間の回復性について検討した。1. NT-1 原薬投与に起因する死亡例はみられなかった。2. 無処置対照群を除き, その他の試験群の投与部皮膚には紅斑, 浮腫, 丘疹, 鱗屑および肥厚などがみろれたが, いずれも回復試験期間中に消失した。3. 一般状態観察では, 投与期間中の 240 mg/kg群の軟便および粘液便の出現頻度の軽度の増加に NT-1 原薬投与の影響がみられた。また剖検前の体外表検査では, 投与部位以外の被毛の光沢の有無に明らかな群間差がみられた。すなわち, 投与終了時では, 溶媒対照群および 240 mg/kg群のほとんど全例に被毛の光沢を認めず, 更に回復試験終了時においても, 240 mg/kg群では被毛の光沢を示さない例がみられた。4. 240 mg/kg群と溶媒対照群の体重は, 投与期間においては無処置対照群に比較して, 低い推移を示した。なお, 240 mg/kg群と溶媒対照群との間に差はみられず, 15 および 60 mg/kg群は無処置対照群とこれらの群との間を推移した。回復試験期間においては群間差はみられなかった。5. 摂餌量, 尿検査, 眼科学的検査および心電図検査において, NT-1 原薬投与の影響はみられなかった。6. 血液学的検査においては, 投与3箇月目に, 溶媒対照群と 240 mg/kg群で, 無処置対照群に比較して, 型別白血球百分率における分節核好中球率の上昇およびリンパ球率の低下がみろれた。また, 投与終了時検査においても同様の所見がみられ, 更にこの検査時点では白血球数の増加もみられた。なお, これらの所見に, 240 mg/kg群と溶媒対照群との差はみられなかった。回復試験終了時の検査では NT-1 原薬投与の影響はみられなかった。7. 血液現化学的検査では, 投与終了時に無処置対照群に比較して, 溶媒対照群で血清総蛋白量の増加, ならびに溶媒対照群と 240 mg/kg群でγ-グロブリン分画比の上昇がみられた。なお, 両群の間に差はみられなかった。回復試験終了時には, いずれの項目についても群間差はみられなかった。8. 剖検においては, 投与終了時および回復試験終了時ともに, 明らかに NT-1 原薬投与と関連する所見はみられなかった。臓器重量については, 投与終了時に, 溶媒対照群および無処置対照群に比較して, 240 mg/kg群で, 左右腎臓の実重量および相対重量の増加がみられ, 明らかに NT- 1 原薬の影響と考えられた。また, 同群では心臓重量に対しても NT-1 原薬の影響が窺われた。回復試験終了時の臓器の実重量および相対重量には, 共に, 有意な群間差はみられなかった。9. 病理組織学的検査では, 溶媒対照群と 15 mg/kg群の投与部皮膚には投与終了時, 表皮の肥厚と細胞浸潤のみがみられたが, 回復試験終了時にはみられなかった。60 mg/kg群では表皮の肥厚, 細胞浸潤のほかに, 釘脚の延長および Touton 巨細胞の出現が投与終了時にみられ, 回復試験終了時においても Touton 巨細胞の出現をみる動物が5例中1例にみられた。240 mg/kg群では, 60 mg/kg群の所見に加えて, 角化亢進所見がみられ, 回復試験終了時には Touton 巨細胞の出現がなお5例中3例みられた。投与部皮膚所見のほかには病理組織学的検査において, NT-1 原薬投与と明らかに関連する所見はみられなかった。10. 以上の成績から, NT- 1 原薬をウサギ背部皮膚に6箇月間連日経皮投与した場合の投与部皮膚に対する無影響量は GTN として 15 mg/kg/day (臨床用量の75倍) であり, 全身影響に関する無影響量は GTN として 60 mg/kg/day (臨床用量の300倍) および確実中毒量は GTN として 240 mg/kg/day (臨床用量の1,200倍) 以上と判定された。
- 日本トキシコロジー学会の論文
- 1986-05-01
著者
-
井本 精一
株式会社化合物安全性研究所
-
新保 幸太郎
株式会社化合物安全性研究所
-
倉元 美由起
株式会社化合物安全性研究所
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岩渕 言美
株式会社化合物安全性研究所
-
永井 浩
株式会社化合物安全性研究所
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