上顎急速拡大装置による頭蓋顔面複合体への生力学的影響について

概要

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矯正歯科臨床において, 上顎骨の狭窄を伴う不正咬合の治療に際して expansion screwを用いて上顎正中口蓋縫合を離開させる急速拡大装置が用いられる. 著者らは, 上顎急速拡大装置が頭蓋顔面複合体にどのような影響を及ぼしているかについて検討するため, ヒト乾燥頭蓋骨を用い, ストレンゲージ法を応用して, 上顎骨と周囲骨および各縫合部について歪分布を測定した. その結果, 拡大による応力は上顎骨とその周囲に広く及んでおり, とりわけ各縫合部に大きな応力が認められた. また急速拡大装置によるヒト正中口蓋縫合の離開量と側方歯の頬側傾斜量を比較するため, 歯列弓急速拡大を行った矯正患者8名の正面頭部X線規格写真, 咬合型X線写真, 石膏模型により計測を行い, 上顎急速拡大法による固定歯の動態について検討した. その結果, 拡大装置の支台歯である上顎第一小臼歯と上顎第一大臼歯の歯冠部拡大量は screw拡大量を上回っており, 上顎第一大臼歯の頬側傾斜量を算出したところ, 最大13.5°, 最小0°, 8症例平均では左右合計4.57°であった. 以上のことから上顎歯列弓の急速拡大法は確実に正中口蓋縫合を離開させ歯列弓の拡大が行える有効な方法であるが, 拡大量の一部は側方歯の頬側傾斜であることが明らかになった. この際, 歯槽窩内での歯の傾斜移動, 上顎骨の外上方への扇状の回転, 歯槽骨の外側への変形の総計が側方歯の頬側傾斜量となって現われることが示唆された.
大阪歯科学会の論文
1995-10-25

上顎急速拡大装置による頭蓋顔面複合体への生力学的影響について

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