タマネギの球の形成肥大および休眠に関する生理学的研究(第2報) : 球の形成肥大に関する組織学的観察
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概要
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タマネギの球の形成肥大過程を組織学的に観察し, 次の結果が得られた。1. 葉身組織と葉鞘組織との相違は気孔および柵状組織にあつて, 3mm伸長した葉の組織では柵状組織が分化し, 7mm伸長した葉において確実に気孔の発達がみとめられた。2. 鱗葉組織と葉鞘組織との間では柔細胞の数, 大きさおよび細胞間隙に著しい違いがみられ, 葉鞘組織では柔細胞の数も少なく, 細胞も小さいのに対し, 細胞間隙は逆にひじように大きく, 多い。一方鱗葉では同じ大きさの細胞がひじように数多くあり, 細胞間隙は小さく少ない。したがつて鱗葉と普通葉とは細胞間隙の有無によつて区別され, 1mmに伸長した葉においてその差異がみとめられた。3. 鱗葉の先端部に未分化の柔細胞が集合し, 長日条件から短日条件に切りかえられると, これらの柔細胞が発達し, 一部, 柵状組織へと分化し, 葉身構造に近づく。このことは鱗葉が葉身組織の抑制さたれ葉であることを暗示している。4. 鱗葉の分化は, 長日条件によつて草丈の増加が誘起され, その増分がピークに達してからまもなく行なわれており, 相当早い時期に行なわれている。5. 鱗葉では維管束系の発達が不十分で, 木部, 篩部の分化•発達が明らかでないが, 普通葉では木部導管の細胞膜が厚く, 大きく, しかも数も多くて維管束系がよく発達している。6. タマネギの苗令とともに, 生長点において分化する葉はしだいに細胞層数の多いものに変化していくが, この傾向は長日条件下でひじように顕著で, 鱗葉では普通葉の葉鞘にくらべ, 細胞層数はひじように多い。細胞の大きさは普通葉では葉の Age によつて変化がほとんどみられず, 5μ前後であるが, 鱗葉では葉の発育とともに細胞が大きくなつている。7. 鱗葉の細胞層数は分化のごく初期に決定されるものと思われるが, 細胞層数およびそれら細胞の肥大度は鱗葉形成時の苗の大きさおよび日長条件によつて影響されるものと考えられた。8. 以上の組織学的な結果から長日条件が分裂葉を活発に形成し, Auxin の形成を抑制するような生理状態を招来して鱗葉を誘起するものであることが暗示された。
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