タマネギの球の形成肥大および休眠に関する生理学的研究 (第8報) : 休眠期間中の球内成分の消長について
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概要
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タマネギ球の休眠の生理学的機構を明らかにするために炭水化物•窒素化合物•Auxin および Gibberellin 代謝について調査した。1. 炭水化物および窒素化合物は貯蔵に伴つて外側の肥厚葉から順次中央部へ, 中央部から内部の葉および生長点部へ分解, 転流, 蓄積の過程をたどるが, 全体として球内の炭水化物濃度は減少していく傾向がみられる。このような傾向は萠芽促進球と不萠芽球との間でもみられた。2. 同一栽培条件下でみられる球の大小によつて, 球内の炭水化物および窒素化合物濃度はほとんど変らないが, 栽培条件の異なる球の大小球の間には顕著な差異がみられた。すなわち, 遮光下の球, 窒素が追加されなかつた球は, 日照の十分な球および窒素が追加された球にくらべて小さく, 炭水化物濃度も低かつた。3. 倒伏の早い球はおそい球にくらべ, 各肥厚葉ともに炭水化物濃度がわずかながら低い傾向がみられた。窒素化合物含量については著しい差はみとめられなかつた。4. 肥大ちゆうのタマネギには相当量の Auxin がみとめられたが, 肥大末期から減少しはじめ, 収穫時, 収穫後とさらに減少をつづけ, 8月26日に最低を示した。その後は逆に増加しはじめ, 9月, 10月とその増加がいつそう顕著となつた。逆に Rf 0.7〜1.0 に存在する生長抑制物質は収穫時前後最高含量を示し, 貯蔵に伴つて減少するが, 萠芽後もわずか残つていた。5. 萠芽促進球は不萠芽球にくらべて著しく Auxin 含量が多いが, 生長抑制物質もかなりの量がみとめられた。6. 球の大小間には頂芽部内の Auxin 含量にほとんど差異がみとめられなかつた。倒伏の早い球はおそい球にくらべ Auxin 含量が少なかつた。7. 休眠球にはほとんど Gibberellin 様物質がみとめられなかつたが, 8月26日になると, その出現がみとめられ, 9月20日には相当量の Gibberellin 様物質がみとめられ, 増加していた。8. 以上の結果にもとずいてタマネギ球の休眠機構はジャガイモ, グラジオラスでいわれている抑制物質との関係は少なく, 炭水化物代謝と密接な関係があることが考えられた。
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